闘技大会無制限部門後篇 その08
闘技大会無制限部門後篇 その08
俺を操る結界は、『SEBAS』が遠隔で動かしている。
その結果、俺を視ても運命を観測できず意図せぬ運命視対策となっていた。
だがそれ自体は、戦闘が始まってからずっと続けているのであちらも承知の上。
おそらくは持っているであろう演算的未来視により、時間を掛けこちらを攻めるはず。
「『我が身を厭わず、迸る紫電』」
「……ッ」
唐突に口遊むそれを、これまでの試合で彼女も理解しているのだろう。
擬・武神流、謡うことで魔技にも似た事象の発生が可能となる武技。
先んじて未来を視たのか、彼女は発動後の接触を避け──ようとした。
だがそれは『SEBAS』により、それができないタイミングで行われている。
「ほう、そこまでして避けますか」
「……雷属性の魔力は無かったはず、なぜ麻痺させられるのです」
「それは企業秘密というものですよ」
先ほどの謡、その後者による仕業だ。
彼女がもし触れていた場合、身動きが取れなくなり攻撃を一方的に受けていただろう。
だが彼女は、それをよほど避けたかったのか、予想外の動きで回避を行った。
──可動域を超える、肉体を壊すレベルで腕を振るったのだ。
だがそれ自体はすぐに治す……いや、直すためにもう片方の腕で叩き戻していた。
ジーヂーといい、武闘世界の連中は肉体の構造を知るからこその直し方をするよな。
《旦那様、申し訳ございません。以降はこれらも想定の上で戦闘を続行します》
《いやいや、武闘世界の連中がおかしいだけだからしょうがないさ。むしろ、これを当てていれば勝てたかもしれないわけだし、また繰り返せばいいだけさ》
想定外を想定したうえで戦う、たったそれだけだがとても難しい。
人体の構造を踏まえての動きには、制限があるがそれを無くせば可能性は無限大だ。
それでも『SEBAS』は勝つために、そのすべてを演算して戦ってくれている。
俺にできるのはせめてその助けになる、小さな邪魔くらいだろうか。
「“念動魔手”──」
「…………ッ!?」
「──×10」
うん、やっぱり運命が見えなくても、システムを通じずとも観測できる未来視を持っているみたいだな。
俺の口の動きで何をするかは分かっても、オリジナル術式の内容をすべて把握することはできない……だが彼女は瞬時に現れた十本の魔手を、躱し切っているし。
今回使った“念動魔手”は、いわゆるサイコキネシスを再現した術式だ。
魔力を物質に触れられるレベルで濃くし、動かすだけの──限りなく失敗作。
うん、だってこれ魔力を滅茶苦茶消費する使い勝手が悪い術式だしな。
普通に攻性術式を使った方が早い、あまり意味の無い術式である。