闘技大会無制限部門後篇 その19
闘技大会無制限部門後篇 その19
決勝戦開始直前、舞台の上で挨拶する俺と『陰陽師』。
彼女の隣にはすでに式神である神子の九拿が侍っており、妖刀を腰に差していた。
≪──それでは、決勝戦開始です!≫
それからすぐ、試合は始まった。
同時に九拿が動き出し、妖刀を握り締め物凄い速度でこちらに突っ込んでくる。
「──“万闇統一”」
「……むん?」
だがそれはこちらも予期していたこと。
俺の影が蠢き、そこから現れた影で構築された壁によって動きは防がれる。
また、壁から少女が現れて再び壁に突っ込み壊そうとする九拿を遠くへ吹き飛ばす。
──そう、終従人形ことエクリには、予めここで待機してもらっていた。
ルール違反? 手段は選んでいられない。
エクリは名前が示す通り終従、自立型の人形という形で式神同様にこの場へ持ち込むことができるのだ。
「いきなり終わらせはしませんよ」
「そうみたいやなぁ……でぇも、手ぇはまだあるんやで」
そう言って、手にするのは無数の符。
それらを周囲に撒くと、刻まれた術式に呼応して無数の人形が姿を現す。
「一火、二羅、三稀、四瑠、六緒、七藻は攻撃。五恵はうちを乗せて上へ、八倶はその護衛を頼むわ」
『──了解!』
いきなり十対二と化した戦況。
エクリには九拿を封じてもらっているが、状況は芳しくない……いかに俺たちの最高傑作とはいえ、神子が相手だとまだ厳しい。
予定では俺が相手取るつもりだったが、彼女自身の意見を受け入れてこうなっている。
では、俺は何をするのかというと──
「──“検索召喚:座標指定『01』”」
「承りました」
「まだ居るのか!」
「マスターには指一本触れさせません!」
開発技部門でも活躍した“検索召喚”。
あの時は妨害として用いていたこの術式だが、召喚の名を冠している通りそちらでの使用もできる。
それを用い、呼び出したのは錬金術で創られた一体のゴーレム。
アイスプル、そして:DIY:の作用によりイレギュラーとなった特殊な個体カエン。
自我を宿すカエンは、己の『プログレス』の力を解放して足止めに入る。
散会して俺を目指す式神たち──そのすべてを封じ込め、抑え込む金属の粘液。
「本当、高い出費…………のはずだったんですけどねー」
カエンの『プログレス:メタルスライム』はその名の通り、体を金属の粘体に置換できる……のだが、使用には基本液状の金属が必要という面倒なプロセスが存在した。
それを生み出す能力も備わっているが、結局それでも戦闘に使うだけのスペックを発揮するには高い出費をして希少な金属を生み出さねばならない。
しかしながら、稀代の錬金術師である先代&当代『錬金王』の助力に加え、:DIY:と【救星者】による迷宮運用、そして何より『SEBAS』の存在が俺にはあった。
元より目を付けていた流動液体金属、そこに数多の世界を渡って経た知識や技術を加え昇華させたオリジナルの金属。
「その名も『超合流星金属』、たださえ硬く柔軟なソレを注げるだけ注ぎました。果たして、貴方がたにそれを突破できますかね?」
俺を包み込むように、カエンは金属を操り展開させていく。
突破するにはカエンを倒さねばならなく、ひいては金属を壊す必要が生まれた。
その間、俺には時間が与えられる。
まあそれは向こうも同じことだが……一つだけ、確実な利点がこちらにはあるからな。