闘技大会無制限部門後篇 その32
闘技大会無制限部門後篇 その32
あらゆる武装を自動的に再補填する、そんなチートを『荷塔竜[ドラグキャリー]』の固有能力を借り受け、行使している。
だが、はっきり言って意味は無い。
この場に居る誰も彼もが、それぞれ異なる理由で仕込んである状態異常付きの攻撃を、無効化しているだろうからな。
「煙幕での目晦ましは、まあある程度上手くいっているでしょうね」
周囲に展開しているドローンが、レンズに映る情報を俺たちにリンクしてくれているので、煙幕だろうと関係無く舞台上の状況を理解することができる。
「煙幕より上に居るエクリと『陰陽師』さんは、まあ相も変わらずですね……アレもアレで、何か仕込みがあるのでしょうか」
何百もの符を『陰陽師』ばら撒き、無数の術を起動してはエクリがそれを防ぐという流れ──おそらくだが、これは他の場所で変化が起きない限り変わらない。
気になったのは、明らかに人外の挙動でエクリに対応していた『陰陽師』。
予想はまあできる、最初はそうじゃなかったのでおそらくは……式神の数が原因。
だからこそ、同じような理屈で強化されているであろう一火、そしてそもそも単体で無双の力を発揮している九拿が退場したとき、『陰陽師』がどうなるのかが気になる。
「それまでは動かないでしょうね……九拿もまた、能動的に特殊なことはしませんね」
まあ、そもそも妖刀を振り回すという時点で特殊だろうというツッコミはともかく。
逆に言うと、妖刀を振り回すこと以外は攻撃への対処ぐらいだろうと考えられる。
結論だけ言うと──『陰陽師』はともかくとして、残る一火がピンチになってもそれを助けに行くことは無い、ということだ。
「さて、そうなると次にやることも決まりましたね──“吸死の妖刀”」
先ほど、[宿業]に命を吸い取られたことで生成された『死天』謹製のアイテム。
妖刀、と名は付いているものの武器としての性能は皆無に等しい。
「これを──“投擲”!」
『むっ、ってのわぁあああ!?』
職業能力で得た、基礎的な武技。
それにより、妖刀を一火に向けて煙幕越しに投げつけた。
ドローン、そして声を出さずともサポートしてくれている『SEBAS』の力もあり、寸分の狂いも無く狙っていた場所──彼女の腿辺りに命中する。
『ぐっ、この程、ど…………こ、れは……』
妖刀に特別な能力は無い、ただ突き刺した対象が死ぬまで命を奪い取るだけ。
純粋な無機物ならともかく、一火は式神でその稼働には自立したエネルギーを用いる。
それが生命力なのかどうかは分からない、がそれで生きているということは間違いないだろう……根こそぎ奪い取り、退場に陥れようじゃないか。