闘技大会無制限部門後篇 その36
闘技大会無制限部門後篇 その36
幻覚による痛み、そして筋弛緩剤による強制的な脱力。
俺の補助とアリアの頑張りにより、九拿の両腕を使えない状態に追い込んだ。
だが、彼女は妖刀を口に咥え、なおかつ筋弛緩剤の効果を片腕のみに留めた。
お陰で手負いの獣染みた動きで、必死の抵抗を見せている。
「──『こくめい』!」
先ほどまでは巨人サイズの刀だった妖刀、それが再び姿を変えていく。
本来の彼女の妖刀の能力、喰らった妖刀の持つ能力を代償と引き換えに展開する。
現れたのは小刀、そしてその柄には一枚の札がぶら下がっていた。
……ロクなものじゃない、俺たちはそう判断して阻止に動くが──もう遅い。
「ぜんぶあとまわし、だからこれぜんぶなおして──『かなえて』!」
引き金は引かれた、その札は彼女の願いを受け力を発揮した。
見る見るうちに、彼女は腕を奪われる前の姿に──いや、万全な状態に戻っていく。
これまでの戦闘の傷も消耗も無い、いったいどれだけの代償を後で支払うのか。
……いや、それだって本当に支払われるのか正直微妙だ。
「闘技場における消耗は、すべて無かったことにされるわけですからね……」
少なくとも、試合が終わるまで同じ方法を取ることは無いだろう。
しかし、同じ方法を取る必要などもう無いのだ──彼女がこちらを睨んでいる。
「全力で潰す──『刻銘』」
「ッ、アリア!」
「遅い──『血饌』!」
これまた小刀、だが札は無い。
代わりに放つ禍々しくも神々しい力……神にまつわる妖刀!
九拿から赤色のナニカを奪い取り、妖刀はその輝きを一際増す。
そして、彼女自身は目を閉じ刀を鞘に押し込み──何も見えなかった。
「アリア……」
だが結果だけは、目の前に。
行ったのは間違いなく居合、それも文字通り神速の太刀。
アリアは兵装をバラバラにされ、その姿は掻き消えてしまう。
九拿は納刀し、残心の意思でこちらを見ながら立っている。
連続して使えないし、使うと動けないという代償があるのかもしれない。
ここで一気に攻める……なんてことをしても、勝てないのが虚弱クオリティだ。
「[アライバー]、回収」
「……面倒」
「着装、[アライバー]」
アリアは消え、バラバラになった兵装が勝手に宙を舞い俺の下へ。
そしてそれは、本来の用途のために俺を包み機体として戦ってくれる。
まあ、アリアと比べれば雲泥の差レベルで操縦能力に差はあるのだけれど。
それでも、[アライバー]の機構は健在なので戦闘は続行可能だ。
「──自動操縦、対象は眼前の九拿」
これまでとやることは変わらない、自身で戦うよりもこちらの方が勝率は高い。
俺にできるのはそのアシスト、具体的には術式の行使である。
「──“忍織貼替・夢想幻痛”」
「! なん……これも幻覚!」
「分かっていても痛いでしょう? ええ、実際にそれを知っているのですから、再現もとても簡単です──『レーザーブレード』を展開、切り裂きますよ」
何度もやっていると、こちらも耐性が付いて無効化されるだろう。
まずは胴体に一撃、これも大して通っていないだろうが……非常に不味いな。