闘技大会無制限部門後篇 その39
闘技大会無制限部門後篇 その39
俺が干渉不可能な場所から行う、魔力の手による印結び。
それを阻止しようとする『陰陽師』たちだが、こちらの手の者たちに無効化される。
「よし、できたな」
印を結び、展開されるのは儀式を必要とする大規模な術式。
本来の用途とは違う、だがそれでもこの場で使う意義のあるもの。
「簡略版だが、破れるものなら破ってみてほしい──“ 災星護 デミ・タ 界 劣 《ーディオ》”」
それは、魔導世界で創り上げた完全オリジナルの結界術式。
本来は星の力を借り受けて行使するモノだが、簡略化することで発動に成功した。
性能は大きく劣化しているものの、それでも対人レベルであれば充分な強度。
展開される結界に、上空の『陰陽師』たちも包まれる──そして、効果が発揮される。
「うん、これで終わりだ」
この術式の恐ろしいところ、それはこれにより引き起こされる事象。
結界内外問わず、定義付けた『トラブル』に対処する──ただそれだけだ。
本来であれば細かい仕様が設けられているのだが、簡略版なのでそれは無い。
──ただ敵対者へと、本来の仕様通り行動するのみだ。
『……亀? 八倶の仲間?』
どこからともなく、周囲にポンポン現れだすデフォルメされた小型の亀たち。
擬似生物であるがゆえに、まるで宙を海のように優雅に泳いでいる。
彼らの内、『陰陽師』と九拿の周りに居る個体の一体ずつが同じ行動を始めた。
首から下げたホイッスルを吹き、包囲網を築き上げる。
『警告します! ただちに降伏し、速やかに結界外へご退場ください! 繰り返します、ただちに降伏し、速やかに結界外へご退場ください!』
彼らは現れてすぐに、何かを行うわけでは無い……そういった手順を踏むからこそ、成立した特別な術式。
九拿辺りは手を出すかもと期待していたのだが、そこは『陰陽師』が連絡を入れたのか何もせずに終わった。
手を出した時点で、即解決という流れだったのだが仕方がない。
きちんと順を追って、彼女たちにはご退場願おうか。
『むぅ~、退場してくれないのですね~……仕方がありません。これより、レベル2へ移行します! ──総員、掛かれー!』
『『『『『『『わぁーー!!』』』』』』』
いっせいに動き出す亀たち。
──しかし、符をばら撒く『陰陽師』も、妖刀を振るう九拿もそれをあっさりと退けてしまう。
そりゃあ当然、レベル2ではまだまだ彼らも本気を出せない。
魔物で言うなら最初期のボスレベル、ラスボス超えたチートボス連中には敵わない。
『は、はやい…………な、なら、レベル──あれっ?』
『もう飽きた』
即死だったため、その警戒度を一気に上げようとした亀。
だが九拿はそれよりも速く、一瞬で周囲の亀を切り刻んだ。
妖刀を吸収する類いのモノに切り替えたのだろう、亀を斬れば斬るほどに体の治癒速度が加速度的に向上していた。
──が、今回その選択は間違いだったと言えよう。
切り刻まれた亀たちが、少し離れた場所で再び元の姿で現れだす。
『も~う、怒りましたからね! レベルはいきなりマックスにしちゃいま~す! ──制圧開始!』
『『ッ!?』』
九拿が当てようとした妖刀も躱し、空中に撒かれた符もすべて消し飛ぶ。
レベルが最大まで上がると、対逸脱した連中用の高いスペックが備わるのだ。
いくつかの条件はあったが、先ほど九拿がそれをクリアしてくれている。
彼女の使役者である『陰陽師』も同罪、つまりは──チェックメイトだ。