特殊耐久サバイバル部門前篇 その08
特殊耐久サバイバル部門前篇 その08
魔獣に感づかれ、迎撃が始まった。
姿を見せないまま、水流操作によって圧倒的な水量をぶっ放してくる。
(──“万物闇換”、“万闇統一”)
周囲の水を侵食し、闇とする能力。
たとえ魔獣の領域であろうと、魔力のごり押しで強制的に闇へと作り替えていく。
それは物理法則に基づかず、俺の周囲から水を消失させた。
真空となったその場所を埋めるように押し寄せてくる水もまた、闇へと置換される。
これにより、俺の周囲に限り魔獣の領域とは異なる場所となった。
闇をちょちょいと調整し、声が音として周囲に届くようにしておく。
「ふぅ……これだけであれば、少しぐらいは使えるかな──“ 闇撃 ダークブロウ ”」
そうして回収した闇を媒介として、魔法を発動して後方に放つ。
本来はただ魔法スキルを伸ばすだけでは使えない術式だが、そこは擬似スキルの応用。
発動に必要な術式を記録し、状況に応じた条件の書き換えを即興で行えるようなプログラムを構築してある。
その分、演算処理に時間が掛かるため、あまり大規模な術式は用意しづらいけどな。
──しづらい、であってできないではないのがポイントだ。
次々と闇の塊が撃ち出され、水流が飛んでくる辺りを狙って飛んでいく。
それを打ち落とすように新たな水流が生まれ、一時的に俺に向ける水流が弱くなる。
「音声認識の方が手っ取り早いこともあるしな──“アップ・ロード:サブマリン”」
エクリの『プログレス』、それは権能を模倣し再現する『コレクトキャプチャー』。
そしてそれは擬似権能『プログレス』も対象、また俺の権限ですべてを対象にできる。
今回使用するのは、アイスプルの住民が発現させている『サブマリン』。
──もう一つの海を、非ざる海をこの場に顕現させる擬似権能だ。
闇を生み出すのと同時に、再び俺の周りに『サブマリン』で海水を展開する。
闇と海の同時侵食が始まり、じわじわと湖の中を書き換えていく。
「っと、さすがにキレるよな……そりゃあ家の真ん中で暴れているようなものだし」
途端、水流がこれまでで一番の出力で解き放たれた。
イメージはウォーターカッター、触れただけですべてを千切るだろう。
だが、“闇撃”の射出だけに留めていたことでそれなりに闇は溜まっていた。
それを一点に集中、水の勢いを緩和させて威力を抑え込む。
「そして、そもそも俺の目的は戦うことじゃないもんな……『SEBAS』」
《解析完了──観測に成功しました》
「よし、じゃあ逃げるぞ!」
魔獣同様に『サブマリン』で海水を操作。
緻密な操作はできないので、海流の方向を上に向けるだけ。
そして魔獣が放ってきた水流を利用し、押し出されるようにして上を目指す。
──魔物たちに阻まれることなく、俺は湖から追い出されるように脱出するのだった。