特殊耐久サバイバル部門前篇 その22
特殊耐久サバイバル部門前篇 その22
罠に引っかかったらしい侵入者は、この火山領域のことを把握していなかったようだ。
魔法式の罠に魔力で干渉した結果、火の性質が過剰となり爆死してしまった。
普段はそういった問題にも対応している完璧な『騎士王』の術式、またそれを参考にした術式ばかり使っているので、俺はあんまり気にしたことが無いんだけどな。
しかし、今回のイベントではオリジナル術式ばかりを使うわけでは無いので、先人が編み出した制御術式を組み込み安定化させるつもりだ。
「まずは火属性──“ 火球 ファイアボール ”」
エクリは魔法スキルを持っていない。
今は職業システムの恩恵である分野に特化した魔法をシステム経由で使えるが、それまでは完全にゼロだった。
だが、魔法を使うということは決してスキルが必須……というわけではない。
エクリの場合、システムが自動で行う魔法発動の工程すべてを自力で行っている。
結果、掌の少し上に火の球が浮かぶ。
あらゆる魔法もまた、擬似スキルと同様にプロセスすべてを刻んでおくことで使えるようにしているのだ。
「……どうだ?」
《問題なく。指定通りの出力です。ただし、やはり制御術式の分だけ普段よりも発動に必要な魔力が増えています》
「そうか。でもまあ、火属性だからってのもあるだろうしな。次は一気にやってみるとしよう──“ 水球 ウォーターボール ”、“ 風球 ウィンドボール ”、“ 土球 ソイルボール ”」
水、風、土属性の魔力を必要とする初歩的な魔法。
闇属性特化のエクリだが、魔法自体は全属性使うことができるのだ。
火の球はそのままに、三つの属性で創り上げた魔力の球と共に浮かべて回していく。
その間に『SEBAS』が術式の細部を解析し、普段との違いを確認してくれる。
《やはり水属性は大きく減衰しています。今回は同出力にするよう術式を調整していましたが、発動だけでなく維持にもかなりの魔力が消費されています》
「ううむ、属性を特化させた術師とかはヤバそうだな……光特化の領域があったら、エクリでも不味いかもしれん」
《同意見です。ドローンにそれらしき領域は確認されておりませんが、光の性質を有する魔獣自体は休人たちの中で確認されている個体です。可能性はゼロではありません》
俺の得た技術の髄が詰め込まれたエクリだが、決して無敵とは言えない。
湖でも魔獣から逃げ出したが、強力な個体に勝てるかは相性次第なのだ。
「弱点を突くとか一瞬の隙を作るとか、そういう時以外は環境に合わない属性は使えないし使わない、ってことにしておこう」
《それがよろしいかと》
これで確認は終了。
さて、火山領域を出るとしますか。