特殊耐久サバイバル部門前篇 その28
特殊耐久サバイバル部門前篇 その28
現在、絶賛逃走中。
領域の中央に生えていた小ぶりな木の枝、それを持ち去ったところ領域全体の植物がそれを奪い返さんと俺に襲い掛かってきた。
それは魔獣に非ず、しかして特別なナニカである。
逃げるために起動した『プログレス』、靴型のソレは活躍の時を座して待っていた。
「──『スピードブースター』、“アクセルカウンター”発動」
一定以上の速度で走り続けること。
単純だが使いづらいこの能力は、条件を満たすことで靴の側面に光を灯していく。
能力名のカウンターが称する通り、走れば走るほど光は灯る。
初期の最大数は12、これを消費することで特殊効果を発動可能だ。
「俺はカウンターを8つ消費し、その効果を発動! ──分身を生成する(ドンッ)!」
俺のすぐ隣に、分身が現れる。
前提条件を必要とするこの分身は、他の能力や術式などで生み出されるソレよりもはるかに高い性能を有していた。
具体的には、本人とほとんど同じことができるのだ──できないのは『プログレス』関連の能力の行使だけ。
「やってくれ」
『──“ 天淵黒亡 エクリエンド ”』
俺、というかエクリの性能は現在一部封印が施されている。
だが分身にそれは当て嵌まらず、能力が全解放されていた。
残念なことに 遺製具 レリック は生成対象に入っていないので使えない、だがエクリそのものに含まれる“天淵黒亡”だけは遺製具と同レベルにヤバいのに使うことができるわけだ。
黒い太陽が上空に現れ、照らされるすべてに等しく災厄をもたらす。
元より、植物は光を求める習性があるわけで……領域全体が対象となった。
「──“万物闇換”、“万闇統一”」
分身が展開した黒い太陽によって、力尽き消滅していく植物たち。
粒子と化していく彼らに干渉し、闇に変換して手中に収める。
エクリの本質は闇の精霊、これまでは発光する木々によって真価を発揮できずにいた。
だがそれらは太陽によって滅ぼされた、ならば闇を全力で使える。
「エクリ、迎撃は任せた。『SEBAS』、魔力は全部委ねる」
『《畏まりました》』
「一気に行くぞ──『大地は満ち溢れ、疾く走り抜けん』。“フルドライブ”!」
殿 しんがり 前提の擬・武神流を設定。
そのうえで、『スピードブースター』による速度強化を極限まで高める能力を発動。
一歩を踏み締めた瞬間、俺の体は自らの認識を遥かに超えた速度で加速した。
闇が俺を包み込み、高速機動による物理の壁から俺を護っている。
植物たちはそれでも抗い、地中からかき集めた栄養分で自らを再生し俺を追ってきた。
だが単純に追い付かず、先回りする植物たちもエクリと『SEBAS』が阻んでいる。
「ふははははっ、追い付ける者なら追い付いてみるがいい!」
あからさまなフラグを立てるも、それは信用があるからこそ。
──結果、俺は枝を握り締めたまま領域からの脱出に成功するのだった。