特殊耐久サバイバル部門前篇 その34
特殊耐久サバイバル部門前篇 その34
ヤドカリが谷の中立地帯へ侵攻を始めた。
アナウンスがその始まりを告げ、領土争奪戦が幕を開く──俺はヤドカリの上で、その様子を見ているだけ。
「よし、影潜り成功っと」
スキルでもなくエクリの性質、アバターを保管している影空間とは別に、ヤドカリに生えた木々の影が作り上げた影の世界へ潜り込み、息を潜める。
理由は単純、そのままの状態だと遠距離からヤドカリを狙う攻撃に巻き込まれるから。
影の空間はいちおう干渉しづらいし、露骨に光属性の攻撃を浴びないと解除されない。
つまり、影に潜んでいる奴が居ると踏んだうえで干渉してこないと露呈しないのだ。
……例外として、超高出力で光をばら撒いてきたら、出力次第で負けちゃうだろうが。
「さすがに序盤から早々に、撃ってくるという展開にはならなかったか…………ルリが居たら、なんやかんやで撃ち込まれていた気がしないでもないけど」
家族とのやり取りができていないので、どこに居るのか分からない妻と子供たち。
少なくとも、谷には居ないとドローンで確認済みではあるが……不可能じゃないしな。
意識を切り替え、影の中から争奪戦で繰り広げられる攻防を眺める。
基本的には魔物たちが谷の至る所を駆け巡り、それを参加者たちが阻止する流れだ。
「魔物たちは……そこまで強くない、のかもしれないな」
《元より、他のヤドカリに比べて乗っている個体の位階が平均して低かったです。下調べといった形で、侵攻を始めたからこそなのかもしれません》
「ゲームでも、いきなり絶対に勝てないレベルの敵が現れない謎のルールがあるからな。だからこそ、一時期は転生したヤツの影響で突然ラスボスが出る……みたいな展開が創作物で流行ったりしたんだよな」
この世界で言うなら、チュートリアルを終えた瞬間に【魔王】やら『騎士王』やらに遭遇するような感じか……。
つまり、そんなロクでもない展開が無い限りは、序盤は弱い個体が中心になる。
ヤドカリが積極的に攻めないのも、もしかしたらそれが理由なのかもしれない。
「どうだろうか、『SEBAS』」
《魔獣との対話が必要となるでしょう。こればかりは外部からの解析で把握することは難しいです》
「つまり、友好的な魔獣を見つけなければいけないわけだ。上手く共存する方法を見つけられれば、そいつはきっとかなりの高得点になるんだろうな」
まあ、最悪俺がやらずとも誰かが暴き出してくれればいいのだが。
そもそもどれだけの個体数が居るのかすら分かっていない、どれだけ広大なのやら。