特殊耐久サバイバル部門前篇 その35
特殊耐久サバイバル部門前篇 その35
仮定の域を脱してはいないが、魔獣たちによる侵攻には何らかの制限が設けられていると思われる……序盤で最強格が出てきても、太刀打ちできないからな。
「……結果はまあ、こうなるよな」
魔獣に乗っていた魔物たちによる、谷への侵攻は参加者たちによって防がれる。
個体の強さもそこまでではなかったし、入り組んだ地形を上手く利用して倒していた。
ここまでは想定の範疇。
事前にドローンで観測した参加者たちの強さは、多少いがみ合っていても魔物たちを圧倒するものだと調べは付いていたからだ。
「で、このまま終わる可能性も想定してはいたんだけど……どうやら、違うみたいだ」
それは唐突に、地面が揺れ動いていく。
震源はすぐ真下、他ならぬ俺が隠れ潜んでいるヤドカリからだ。
一歩、また一歩と多脚を動かして前に進んでいく──谷を破壊し、強引に自らの道を切り開いて。
「魔獣による干渉に限り、自然破壊効果でも備わっているのか?」
《似て非なるものかと。単純に環境の侵食、侵攻時の制約によるものでしょう》
「つまり、さっきのアナウンス付きで暴れる時は他の環境でも相手の領域を破壊しやすくなるわけだな。物理問わずに」
この地形が谷で、中立地帯だったからこそのことなのかもしれない。
実際、これまで見た魔獣たちの干渉っぷりからすると、こうもあっさりは無いだろう。
「で、防衛にさっそく参加者たちが動くわけだけど……あーあ、舐めすぎじゃないか?」
魔獣は限りなく固有種に近しい性質を秘めているのだが、理論上(再生個体を除けば)何度でも出現する可能性を持つ存在だ。
ゆえに彼らは固有種のように、頭上に誰でも見える名前が表示されることは無い。
──ただ強い個体は固有種以上に強い、その強さの水準がかなりバラついているだけ。
愚行を犯した参加者たちは、普段警戒を他の者に委ねている連中なのだろう。
ヤドカリはデカい、だが見る者を圧迫するような存在感は放っていない。
多くの戦闘を経験してきた参加者ならば、一見油断してしまうかもしれないのだ。
一斉にヤドカリに向かっていき、攻撃を放つ一同──彼らは脚に蹴り飛ばされて死ぬ。
「そ、即落ち二コマ……」
脚を素早く動かし、加速していたヤドカリの質量に敵わなかった参加者たち。
死に戻り──その粒子が後方の拠点辺りに吸い込まれ、復活していく。
無謀ではあったが、無策というわけでは無かったらしい。
誰かが設置した死に戻り用の使い切りセーブポイント、それで威力偵察をしたわけだ。
「聖職者系の職業持ちが、『プログレス』を組み合わせればいけなくはないか? ……回復や支援で高得点も稼げるし、ある意味一石二鳥なわけだな」
まあ、そうではなく純粋な慈しみの心で支援しているのかもしれないけど。
ともあれ、ヤドカリの強さを図るのにはいいアシストだな。