特殊耐久サバイバル部門後篇 その27
特殊耐久サバイバル部門後篇 その27
初期状態よりアップデートされたもの、加えて第二段階へ『リビングドール』を強化するという行い。
それは時間稼ぎを兼ねた遅延行為。
いきなり圧倒するわけでもなく、相手方にも勝機を見出させることで強硬策を使わせないやり口……目的は魔獣を逃がすことだし。
「……まっ、いっか。たしかに、あの魔獣を逃がしたことは怒られちゃうかもしれないけどさー。それよりももっと大きい目的を果たせたら、全部問題無いんだから!」
「それもそうですね……ですが、私を相手にそれを語りますか」
「『生者』だもんねー。ふふんっ、だからって倒せないわけじゃない!」
「まあ、倒せますよ。ただ際限が無いだけでいつでも」
今は特殊耐久サバイバル部門中なので、可能な限り死なないようにしているけど。
最初の方で蘇生が合法だと知ったため、更に粘り強い生存ビルドになっているぞ。
「今の私に水分操作は効きませんよ?」
「うん、知ってる。もうやってるし」
「ですよね、知ってます。ならば、なぜ更に出力を上げているのですか?」
呼吸を不要とする人形の体を持つエクリ。
また周囲をすべて闇へと置換することで、『白氷』の権能である水分操作の影響を排除することに成功していた。
「えー、分からないのー? うーん、教えてあげてもいいけどつまらないからなー……どうしてだと思う?」
「……直接私を抑え込むのではなく、間接的に何かをするためのブラフ、ですか?」
「…………あの、こういう時って普通間違えるものじゃないの?」
「こちらも生存が掛かっていますので、真剣にお答えしますよ」
彼女が水分を操作しているのは、俺の周りだけでなくこの区画全体となっている。
出力が上がり、また権能以外の彼女の力も同時に引き出されて周囲は猛吹雪だ。
はっきり言って無駄、だが無駄では無いからこそ彼女もそれを実行している。
周囲の環境、そしてそれを取り巻く様々な要素を考え……ある一つの結論に至った。
「…………」
「ッ、いや無言で逃げるな! ふふん、気づいたってもう遅いんだから!」
「……みたいですね」
≪隣接領域との接触が行われました≫
アナウンスは唐突に。
開幕直後ではないこれは、明らかに違和感の塊……そして、有志の調査により判明しているこの中立地帯の隣接領域は──
「想像はしていたんですがね……ここで来ますか、『氷原』の魔獣」
火山とも直接隣接しているのだが、今回は先に中立地帯を……って、それなら最初から侵攻しているはずだもんな。
思いつく理由は今なお吹雪くこの状況。
自分にとって明らかに有利な環境が形成されているからこそ、魔獣がここを攻めてきたわけだな。