特殊耐久サバイバル部門後篇 その28
特殊耐久サバイバル部門後篇 その28
魔獣を逃がすために時間を稼いだ俺。
そして、『白氷』は──新たに別の魔獣を中立地帯へ招いていた。
「これ、怒られません? わざわざ侵攻していなかった魔獣を引っ張ってきたことになりますし」
「…………おのれ、『生者』! なんて悪辣非道なことをするの!?」
「いや、私に濡れ衣を着せようとしないでくださいよ。言っておきますが、証拠は押さえてありますので無駄ですからね。最悪、私を退場にしないとダメですよ」
「くっ、なんて卑怯な……!」
エクリの視界がカメラ代わりになっているので、それをドローン経由で外に配信すれば『白氷』の悪行は即座に知れ渡る。
それにそもそも、ほぼ間違いなく星々のお偉い方には伝わっているはず。
こちらはこの後の結果次第だろうな……つまり、俺を退場させられればチャラだ。
「…………」
「だーかーらー、逃がさないってー!」
擬似スキルの便利な点は、スキルと違い発動兆候をいっさい掴ませないところ。
身力流動の強弱で感知はできるかもしれないが、 発光する演出 エフェクト などは発生しない。
だがそれでも、分かるヤツには分かる。
具体的には、そもそも擬似スキルの使用に関係なくこちらを感知できる相手。
周囲の水分を掌握している『白氷』。
俺の周りはエクリの“万物闇換”で闇に変換しているが、それはそれで急激な変化を読み取られてしまう。
「……どうしても、逃がしてくれませんか」
「せっかく来てくれるんだから、いっしょに歓迎しようよ」
「いえいえ、お気遣いなく。それよりも、こうしてこの場に居続けては彼の魔獣もここへ来るはず……大丈夫ですか?」
「んー? 大丈夫だと思うよ、あたしたちは魔獣を倒さないけど、そのお手伝いぐらいは認められて…………あっ」
「なるほど、いい情報です」
倒せない、じゃなく倒さないか。
普通は制約で前者に縛っておくはずだが、そこは彼らの自由意思に委ねていると。
逆に言えば、無双アピールでも必要としない限りは戦おうとはしないわけだな。
これから来る氷原の魔獣と相性がいいはずの『白氷』が、そう言っているわけだし。
本格的に逃亡を図りたくなったので、こちらも手札を一枚切ることに。
普段よりも更にバレないよう、静謐性を高めた『SEBAS』による術式代行。
《──“ 陰影門 シェイドゲート ”構築完了。展開、転移を緊急実行します》
「では、イイ情報を頂けましたので、これにて失礼します。頑張ってくださいね」
「あーーー!!」
周囲の闇を一気に収束、足元の影を濃密な闇にすることで準備は完了。
闇属性派生の影魔法、その中でも更に難度の高い陰影の術式。
影を門とし、異なる場所に集団で転移することができるこの魔法。
ワンランク下の影魔法にも転移可能な術式はあるのだが、今回はあえてこちらを使用。
対象が集団前提なので、ピンポイントで阻害されても多少の補正で押し通れる。
──叫びながらも術式に水を差し、発動を阻止しようとしていた行為も防げたわけだ。