特殊耐久サバイバル部門後篇 その32
特殊耐久サバイバル部門後篇 その32
迷わせ、惑わせ、彷徨わせる霧の樹海。
人を動物と見間違うほどの幻覚を生み出すヤバい場所を、大本であろう魔獣目指して絶賛移動中。
「──“万物闇換”」
すべてのモノを闇にするエクリの力。
今回は相手の支配領域での実行なので、普段通りのスペックは発揮できない……が、それでも霧の影響を抑え込むことはできた。
「視界はスッキリ……とはいきませんが、先ほどのような幻覚は無くなりましたね」
探知も感知も一切反応しない霧の中、だが騙されることなく真実を見つめられる。
そんなわけで、狂わされていた方角を修正しつつ樹海の奥へと向かう。
裏切り者たちだけでなく、魔物とも遭遇するがそこはサクッと躱していく。
殺すとそれが糧となり、気づかれる可能性があるからな……そこは魔獣次第だけど。
「ついでに“万闇統一”、形状は『獣』。加えて“支援術式03”かな?」
魔獣がどこに居るのか分からないので、スムーズに見つけるための遣いを生み出す。
常時位置情報を俺に送る仕様なので、消されればすぐに分かる。
そうして生み出した擬似生物たちに、無数の術式や能力を混ぜ込んだ我流術式を施す。
単純な強化だけでなく、条件次第では蘇生すら行われる滅茶苦茶な内容だ。
そうして様々な方向に擬似生物を派遣すれば、いくつかの場所で消失が確認される。
その反応を調べ、普通じゃない消され方をされた場所を特定。
「ここですね──『転移』」
術式ではない。
闇に獣を模らせたように、ただ命ずるがままに闇が俺を望む場所へ運んでいく。
ただし、術式と違って 遺製具 レリック ……というか固有種が使う前提の力。
そのため燃費がかなり悪い、それを補うための“万物闇換”なのだ。
◆ □ ◆ □ ◆
樹海領域 最奥
「あの時ぶりですか、一方的ではありますがお久しぶりですね」
すでに侵攻の際に姿を見ているので、魔獣の特定はすぐに済んだ。
何もしていないように、のんびりとしている亀──その背中から霧が吹き出ている。
「申し訳ありませんが、貴方を討伐させていただきます」
『────』
「幻覚による会話はできませんよ。すべて無効化していますので」
『────』
そんな手段もあるようだが、どうせこちらの戦意を奪う仕込みがあるだろうから無視。
協力を謳っておきながら、単独で討伐……とはいかないのが魔獣戦だ。
それでも先に来たのは、俺も俺でこれからのために仕込みをする必要があったから。
──霧こそが俺たちの侵攻を阻む矛であり盾、つまりそれを奪えば勝機は高まるのだ!