特殊耐久サバイバル部門後篇 その48
特殊耐久サバイバル部門後篇 その48
たった独りで逸脱者や最上位職持ちを相手取る、そんな愚行の真っ最中。
空間の魔獣に用意してもらった雑魚魔物たちを駆除し、特殊なバフで無限強化を図る。
まあ、それ自体はあまりいい結果を出さなかったのだが、それでも準備は整った。
擬・武神流、そして二種類の転移を携えて戦闘を開始──その手に鏡の指輪を握って。
「“ミラーリンク”、追加ですよ」
「────!?」
『ちょ、こっち来ないでよ!?』
そう、『プログレス:ミラーリング』は媒介となる指輪を複数個用意できる。
触媒に鏡が必要となるのだが、そちらはイベント期間中にすでに用意済み。
複製を狙い襲撃するのは、『八大星魔:界樹の神子』。
それを阻むように攻撃が至る所から飛んでくる……が、そのすべてを俺は躱す。
俺にも予測不可能なランダム転移、そしてピンポイントで行われる転移。
それらを『SEBAS』が上手く使っており、俺はただ手を伸ばすだけでいい。
「攻撃が当たらないな……『極拳』よ、アレはどこまで見える?」
「あー、そんなに長くはねぇぞ。あと、あくまで予測だ。知らねぇ不意打ちなんかには対応しづれぇな」
「……なるほど」
攻撃をすべて避けられている理由の一つ、それが【闘神】の職業能力“戦歴軌績”。
当人が語る通り、それは戦闘データに基づいた擬似的な未来視。
だがそれは、今までの【闘神】就職者という戦闘特化な集団のモノ。
彼らの経験や勘などが詰まったソレは、擬似とは思えないほどに正確な未来を映す。
……まあ、戦闘の素人である俺にはその情報の処理なんてできないのだが。
こちらもまた、『SEBAS』が対応してくれているからこそ有効利用できていた。
「どうぞ好きなだけお考えください。その間にこちらは、目的を達成しますので──“ミラーリンク”」
「──」
『みんなー、ごめーん』
「対象は『界樹の神子』、これで使うことができますよ──“界樹降誕”」
地面に打ち込んだ一本の樹の根。
いつもはアイスプルの神・世界樹を触媒にするのだが、さすがに今回は持ち込むことなどできていない。
代わりに利用するのは、魔獣に追われながらも獲得した星樹の若木……の 複製体 クローン 。
この特殊な環境に加え、無尽蔵の身力供給と複製した権能でその真価を発揮。
急成長を遂げた星樹、それは世界樹にも負けず劣らずの巨躯を全員に知らしめる。
人は、自然の偉大さを忘れることはなく、思わずそちらに意識を向けてしまう。
そのほんの一瞬、生まれた隙を突き新たな犠牲者を──といったところで、一本の鑓が突き刺さり俺の道を阻む。
「行かせると思うか?」
「……残念」
すぐにその状況を脱した『騎士王』。
星鑓を魔術で回収すると同時に、星剣を持ち二刀流でこちらに構える。
俺の意思に関係なく“乱雑転移”が発動して距離を取ろうとするのだが、なぜか転移先にも『騎士王』が現れ妨害してきた。
《術式の解析を終え、瞬時にこちらへの対応が可能となったのでしょう》
「……なんとも面倒な」
「それはこちらの台詞だ」
「ハァ……仕方ありません、今はこの程度で満足しておきましょう」
「ッ、やはり面倒だな」
先ほど使った“界樹降誕”。
それはただ世界樹を急速成長させるための術式ではなく、本来は『界樹の神子』の権能である操作までをも取り入れた術式。
ゆえにリソースさえ充分にあれば、俺にも同様のことができる。
──星樹の根が動き、俺以外のすべての者に襲い掛かっていく。