特殊耐久サバイバル部門後篇 その50
特殊耐久サバイバル部門後篇 その50
星樹の一時利用は『界樹の神子』に阻止され、再び【闘神】の能力を再使用。
先に使った“マスク・オブ・アクター”の制限時間も近い中、延命を続けていた。
「ハァ、ハァ……時間ですか」
突如、満ち溢れていた万能感が失われる。
それは“マスク・オブ・アクター”の時間切れを知らせるもの、『騎士王』の力を再演できなくなったからだ。
「それでも、まだ……!」
「貴公との戦いは無為なものだ。ぶら下げられた報酬にどれだけ価値があろうと、得られないモノに意味など無いだろう」
「……獲られないよう、こちらも必死に足掻いていますからね」
「ああ、本当に足掻いている。何度殺しても死なない。こちらの面々も誰一人として減っていない──それでも貴公は、今なお生き残るのだ。さすがは『超越生者』」
主観としてはかなりの時間が経っている。
その間に多くの逸脱した連中を抑え込み、死なずとも戦闘不能な状態にしておいた。
それでも、というかやはりというか。
目の前の『騎士王』はそれらを退けた。
他にも何人か、 上澄みの上澄みとも呼べる ハイエンドな ヤバい連中が五体満足な状態でいる。
「……見ての通り、無事ではいませんがね」
エクリに憑依していた状態も、すでに止めさせられて元の状態。
おまけに両腕も奪われて封印済み、備えていた魔道具なんかもほとんど使用不可。
結果、どうにか立って戦意を見せることしかできないである。
ただ一つ、宙に浮かぶ狙撃銃だけが俺の武器となっていた。
「加速門多重展開──射出!」
放った弾丸は音速を超えて、光速の勢いで『騎士王』を穿つ──はずだった。
彼女はただ、剣を振るう……弾丸は二つに分かたれ、離れた場所で爆発する。
「内部に魔獣の力を注いだ、特殊弾のはずでしたが……残念です」
「もう終わりにしよう。星剣、そして貴公に作らせた星鑓がトドメとなる。誇れ」
「まだ諦め──ごふっ」
喋らせるとまだ何かしそう、なんて思われたのかもしれない。
銃による反撃も間に合わず、俺は剣と鑓に刺し貫かれた。
「これで仕舞い……チッ」
「………………あはっ」
何度も死んでいるため、[称号]も職業能力も今は使えない。
アイテムも枯渇し、『超越生者』の権能も意味を成さない現状。
それでもまだあった。
使わないでいた、最後の切り札。
他者のモノを借り受けるのではない、俺個人の願望が注がれた『プログレス』。
仮面が使えなくなった今、また追加もできない状態で“瞬間切替”を使い装着した。
腕は封じられている、それでも残っている部位の先端にソレは取り付けられる。
そして効果が発揮される、休人たちにハズレと称されるその『プログレス』の名は──
「『ネバーギブアップ』、これが私の願望の名前ですよ」
「…………そうか」
「ええ、そして──終わりです」
能力は食いしばり。
死んだ際、デスペナを負った状態でその場に残ることができるというもの。
生命力が補填されるわけでも、状態異常が解消されるわけでもない。
ただ死ぬ直前の状態に戻るだけ、最悪復活した直後にまた死ぬハズレと呼ばれている。
俺も普段は使わず、他の『プログレス』をインストールしているが今回は別。
そんなほんの少しの延命のお陰で、ここまで来ることができた。
ここで上手く刺し違えれば。創作物における主人公ポジションも狙えたかもしれない。
だが俺にそんな 運命 みちびき は無い──それでも、戦いはこれで終わる。
「どうやら、ここも消えるようですね」
時間経過により、無数の生存特化[称号]が再び息を吹き返す。
強制的な延命、たとえ体に星具が突き刺さろうとも、システム上は生きている。
そうこうしている間に、この場に居る全員が光の粒子に包まれていく。
──それは参加者たちが成すべきことを為し、サバイバルが終わることを示していた。
「魔獣が討たれたか……彼らに実力がついてきたことを称賛するべきか、それも貴公を完全に討てなかったことを嘆くべきか」
「素直に称賛しましょうよ……ははっ、どうにかイベント終了まで生き残れましたよ」
同時に、空間そのものが崩壊していく。
この場を築き上げた『空間』の魔獣が、イベント参加者たちに討たれた影響である。
こうして俺たちはこの舞台から、(ほぼ強制的に)脱出することに成功したわけだ。
死に抗い生に縋り、俺は刺客たちから逃れ生還を果たすのだった。