星樹接ぎ木 前篇
星樹接ぎ木 前篇
アイスプル
闘技大会をすべて終えた。
現実世界でその鑑賞会などもやったし、特殊耐久サバイバル部門の最後で何やら意味深な展開があったことも知る。
「──まあ、それはそれとして、今はこれに集中しないとな」
その後、[ログイン]した俺はアイスプルでもっとも高い物──神・世界樹の麓へ。
同行するのはこの星の守護者、みんな大好き風兎さんである。
『何を当たり前なことを。ハァ……何がどうなれば、星樹様の枝を持って帰ってくるような事態になるのだ』
「だから言っただろう? 魔獣が支配する領域に在ったって。俺はそれを拝借して、手土産として持って帰って来ただけだ」
『だけ、ではなかろうに。まったく。だがしかし、魔獣から手に入れたというのであれば何も言うことはない。むしろ称賛しよう』
「おっと、風兎が誉めてくるなんて珍し過ぎて照れるな……」
むしろお説教されることばかりだしな。
うん、何というか……いつもご迷惑をお掛けしております。
『自覚があるならば改善しろ! だが、このような男であるからこそ、成し得たという点も忘れてはならないのか……うぅむ』
「まあまあ、今回は置いておこうぜ。それよりもほら、儀式も『SEBAS』がかなり進めておいてくれてあるし、最終工程の方を早く始めよう」
『……それもそうだな』
俺たちは神・世界樹の洞の中へ。
彫り出して飾ってある創造神様たちの神像へ祈りを捧げ、向かった先には小さな洞。
その中に俺と風兎が入ると、出入り口が透明な膜で塞がれる。
同時に軽い浮遊感が発生し、それがしばらく続く……気まずい沈黙。
「なあ、最近どうだ?」
『……妙な気を遣うな』
「あっ、はい」
「『…………』」
『……そういう貴様こそ、どうなんだ?』
「いや、俺の場合は特に……強いて言うならまさに、最近あった出来事の結果が今なわけだしな」
『……それもそうだな』
なんて中途半端に会話をしていると、重力が掛かり目的地への到達を教えてくれる。
これ幸いと洞から出れば、そこは先ほどまでとは違う場所。
「やはり軌道エレベーターだよな……いや、俺たちの世界だとまだ無いんだけれど。創作物なんかだとあるんだよ、こういうの」
『大半の世界には無いだろうな。宇宙樹は世界樹の中でも、かなり特殊な部類だ』
「だよな。宇宙を目指そうっていう世界でもないと無理だし、あくまで科学を基にしていない魔力ありきの世界でだから、なおのこと難易度が高いだろうし」
俺という宇宙について初歩的な知識がある存在が居たこと、加えて【救星者】が世界樹の再生まで成し得たうえ、莫大なリソースでそれを成長させたからこそできたことだ。
そんな宇宙樹の性質を内包する、チートな世界樹によって上を目指した理由。
それこそが、イベントで得た星樹の枝を使うことなのである。