舞い降りた手紙 後篇
舞い降りた手紙 後篇
ギフトカタログ、その言葉が意味するものはやはりお歳暮や引き出物だろうか。
だが今回は違う、失名神話の創造神から授けられたそれは── 祝福 ギフト カタログだった。
その詳細もまた、現在進行形で書き換わっていく手紙に記されている。
内容を気にする風兎のためにも、そして何より自分のためその文面を読み上げていく。
「『それは見ての通り、載っているものが僕たちからの祝福という形で貰えるカタログだよ。経費はいろんな形で貰っているし、気にしなくていいよ。ちなみに、アイスプルで信仰されている純粋な分だね』……これは」
まだ中身を開けていないカタログだが、ある意味厄そのものではなかろうか。
他の神話信仰者が、またどれだけの聖職者たちが希うものか理解してもらいたい。
信仰を何のためにするのか、形はいくつもあるがこちらの世界において、実益を求めての信仰というのは意外と多いものだ。
祈りを捧げた対価が、加護という形で示されるからこそ、人々は神に祈る。
そして神もまた、継続的な祈りを得るため他の神話以上の実益を彼らに提示するのだ。
そんな中、失名神話が提示したカタログ。
目に見える形で、しかも自分たちで好きなようにその恩恵を選べるというのだからさぁ大変……普通なら奪い合いが始まるな。
「なあ風兎、うちの住民でこれが欲しいって希望を出す奴いるかな?」
『少なくとも、我の民だった者たちには居ないだろうな……貴様の食べ物があれば充分、あるいは今以上に満足の行く物を提示すれば何も言うまい』
「うん、そんな気がする」
一癖も二癖もある元風兎の森の住民たち。
超越種や災凶種になった個体も居れば、そうでなくとも『プログレス』の発現や職業による無双を可能になった個体などなど。
そんな文字通りユニークな彼らは、基本的に俺の作る物を好んで食べている。
神への祈りより食べ物というか……うん、更なる実益を求めているわけだな。
「『ツクル君、クローチル君、それに『SEBAS』君の誰かが神像の前でカタログを出して欲しいモノを言ってくれれば、それをこちらで用意するよ。もちろん、前提条件を満たしているものだけね』」
『な、なぜ我もなのですか!?』
「『君のことも高い評価をしているからさ。うんうん、特に君からの信仰は純粋だから目立つよ……創造神である僕より、獣神の方が信仰されているのは少し残念だけど』……風兎さんや、どうします?」
『こればかりは変わりませぬ』
神様を意識して、丁寧語だがそれでもきっぱりと断言する風兎。
うん、だからこそ創造神も、風兎を評価しているのだろう。
「『うん、今のはただの愚痴だからね。話はこれまで。カタログに書いてあるものはもちろん、要望があれば受け付けるよ。全部が通るわけじゃないけど、大抵のものはOKさ。これもこの神話の緩さかな?』」
寛大さって言ってくれよ……。
ともあれ、手紙はここまでのようで、ふわりと俺の下から離れて浮かび上がる。
だが最後に、伝えたいことがあるようで、その文面が書き綴られていく──
『なお、この手紙は読み終わると同時に爆発する』
ポンッ、と軽快な音を上げて手紙が爆発。
紙吹雪が辺りに撒き散らされ、すぐに粒子となって宙に消えていく。
「……なんか凄いバフが付いてる。今なら独りで『騎士王』でも倒せそうだな──能力値が普通にあるヤツなら」
『貴様では無理だな』
創造神からのお土産は、残念ながらいかされることはない。
だがまあ、とりあえずカタログの中身を精査しなければ……何が載っているんだ?