能力値底上げ計画 中篇
能力値底上げ計画 中篇
俺と『騎士王』の密(かな食事)会。
今回俺が求めたのは、能力値の基礎値を永続的に増やすことができる何かしらが存在するかどうか、というもの。
「──無いな。ふむ、今回はいつもとはまた格段に味が際立っているな」
「やっぱりそうか。違いは環境の変化が主なものだと思う。うちも今回のことで、いろいろとあったからな」
彼女の返答も、そしてそれに対する反応もいつものこと。
大抵は無理難題の類いだし、否定無いしは禁則事項であるのが毎度のオチだ。
「永続的、というのと能力値をというのが問題だな。寿命を延ばす、魔力を増やすといったものであれば存在はするが……接種や使用で、と前提条件を立てるならば答えは先の通りになる」
「休人に前者は不要だし、後者については目途が付いているからいい」
「そうか……まあ、『生者』が摂取しても肉体が弾け飛ぶだけだろうからな、気にせずとも問題無かろう」
「…………」
うん、すでに経験済みである。
外付けのバフであればともかく、内側から何かを施そうとした場合、基本的に俺の虚弱なアバターはそれに耐え切れず死ぬのだ。
「『生者』たちの住まう世界であろうと、努力せずに得られる力など左程無かろう? あるにしても、真っ当な努力を行った者に比べれば微々たるもの」
「まあそうだな。食事から運動から、適切なモノを選び続けた果てに、一部の才ある者だけが一流に至ることができる」
「どの世界も似たようなものか。『生者』が求める即効性の結果は、少なくともただ摂取するだけで得られる……そんな文字通り魔法の代物は無い。器──肉体を弄る、こちらの世界の民はそれが限界だろう」
「……俺たちの場合は、それも無理だしな」
広義の意味で肉体改造と言えば、いくつか挙げられるものはあるだろう。
王道で言えば先に挙げた健康管理からなるもの、邪道ならば手術などによる施術。
だが『騎士王』が語るのはそういったものではなく、もっと根本的なもの──魂魄に根差す分野を弄繰り回し、存在としての情報を書き換えるというもの。
詳細を語る必要は無い、なぜならこれについてはまったくの無意味だから。
そう、休人全員がそうなのだ──すでに俺たちの体は、それが最大まで拡張済みだ。
「普人族であれば上級までのあらゆる職業・スキルへの適性を持ち、それ以外の種族でも本来は特殊個体にしか不可能なモノでも手にすることができる。かつて貴公らの存在について、そう聞いたときには驚いたものだ」
「俺以外のほとんどの奴は、それに加えてレベルアップした時の強化の方向性を操作できるし、そもそもこっちの人よりもその強化量が多いなんてのもあるんだがな……俺は固定だし、おまけに最低量なんだが」
「改めて、その点だけ聞くと『生者』を不憫に思うがな。それでも、貴公に内包された神授の権能から考えれば、その程度で釣り合うのかと我は思うぞ」
「隣の芝生は青く見える、ってヤツだな」
レベルは目の前の世界最高を超え、カンストしているためこれ以上成長できない俺。
そんな俺が器を強化する方法は、もう何一つとして存在していなかった。
例外は外付けの器──主に最上位職。
それを育てていけば、相応に能力値の補正が永続的に入っていく…………うん、人数制限が無ければそれで良かったんだけどな。