違法侵入者 その08
違法侵入者 その08
戦闘中に解析した結果、【殺人王】の持つ『プログレス』を暴いた。
それは死を糧として、更なる死を生み出す最悪の擬似権能。
(自分の関係者──仲間か自分が殺した相手の死亡時リソースを集めて、能力付与に使うことができる……それが『メメント・モリ』の能力)
加えて、【殺人王】の能力。
自身が近接武器で人族を殺した際、獲得できる経験値を増加させる(正確には吸収量を向上させるらしい)。
つまりはそういうこと。
殺せば殺すほど自身を強化できるし、強化で消費した経験値も何人か殺せばすぐに戻すことができる。
少なくとも『メメント・モリ』の情報を把握する限り、蘇生効果などは存在しない。
……それはそれで、これまでも死なずに逃げ延びているという面倒臭さがあるけどな。
「さすがは【殺人王】。ええ、とても厄介です……しかし、それだけです」
「なあ、さっきから挑発ばかりで全然何もしてこねぇな」
「そう見えますか?」
「…………そういうことかよ」
一瞬、男の体が先ほどの剣と同じエフェクトで光り、俺のしたことに気づいた。
俺、というかエクリは闇の精霊を核とした存在であり、その操作は神懸っている。
ただ念じるだけ、そういった技術を不得手とする俺でも緻密で静粛な行使が可能。
じわじわと周囲に広げていった闇の包囲網に、これまで気づかれずに済んでいた。
とはいえ相手は対人特化の殺人鬼。
こちらが闇や影を操ることなど百も承知のうえ、それ以外の戦術だって膨大な経験からある程度推測できるだろう。
──それでも、一切の兆候を見せずに攻撃すれば?
本人が完璧に対策していると思った部分から、あえて攻めていればどうなるのか。
「強制弱点化、理不尽もまたこの世界の法則の一つです。加えて、そこに少々の幻覚が混ざれば……御覧の通りですよ」
「こんにゃろう!」
「諦めないその姿勢には、大変好意を持てるのですが……弱者の無駄な抵抗にしか、今は見えませんね」
今度は全身を包む強化エフェクト。
全力で投げつけられたその剣は、同様のエフェクトで殺傷能力を高められているのがすぐに分かる。
最期の抵抗、しかしそれも油断することなく転移術式で躱す。
男は──ニヤリと嗤い、その手に新たな武器である槍を握り締めこちらへ放つ。
「──なっ!?」
「言ったでしょう? 弱者の抵抗にしか見えないと。さて、そろそろいいですかね?」
「…………!」
が、それは周囲の闇によって防がれた。
続けて絡めとるように触手が伸びていき、武器と男自身を捕縛する。
逃げは許さない。
殺しても逃げるだろうし、取るべき選択は無力化──闇の操作と[カゲフミ]を組み合わせ、とりあえず拘束しておいた。
「むぐー、むぐぐー!!」
「しばらくの間、そうしていてください。その間に、ここを潰しておきますので」
影を以って描く魔法陣、規模と出力が高まるように仕込んだソレが瞬時に起動。
真っ黒な玉がそこに現れ、何もかもを呑み込むように辺りを無作為に吸引。
対象は拠点全体、築いたその土地ごと過剰な重力の中へ押し込んでいく。
しばらくすればそこは更地に、何も残されてはいなかった。