違法侵入者 その12
違法侵入者 その12
鎖同士のぶつかり合いは、本数で勝った俺が押し切る形に。
数本程度隠し持っていた程度で、百本を同時には相手取れなかった。
「捕縛完了っと。さて、当初の目的を果たすことにしますか……」
「「…………」」
オーナーとサブオーナー、『DDD』のお偉いさんたちに見守られながら俺は目的の品である『目印』──『プログレス:トラベルトランク』に触れる。
これを介し、『DDD』所属の犯罪者たちはここ万戯華境へ乗り込んできていた。
ならばこれを破壊すれば……と考えるのは短絡的、というか面白みに欠ける。
《『SEBAS』、一つ頼みたいことができたんだが────って、可能か?》
《現状では可能です。しかし、管理者権限以外での実現は難しく、またそれもマスター級になってしまえば解除されます》
《ある意味それを望んでいるから問題ない。時間稼ぎにはなるだろうし、初期の目的はこれの破壊だ。それだけじゃあ情報のリセットで終わっただろうから、それで充分だ》
《畏まりました。では、手はそのままで》
触れた状態で待っていれば、まるで俺が何かしたみたいな演出をしてくれる。
具体的には闇がトランクを覆い、そのまま南京錠みたいなデザインを施す形で。
「──能力に一部、制限を設けました。街などの大衆が集まる場所はともかく、こういった亜空間や特殊なエリアにおいて座標の設定はできなくなります」
「「……!」」
「解除する方法は二つ──この私を滅ぼす、あるいは私の力以上の出力をこの『トラベルトランク』が出せるようになる、です。前者はあまりオススメしませんね。それは貴方がたがよくご存じのはず」
管理者権限による縛りなのだが、それを上回ることはできなくもない。
そう、マスター級とは俺たちの管理下から半ば外れた、限りなく本物に近い権能だし。
ここまで生かしていたオーナーたち、そして先んじて捕縛していたクランメンバーをこの場に集めて並べていく。
「貴方がたを殺害し、監獄に送り込むこともできなくはありませんが……保険を仕込むぐらいは造作も無いでしょうし。なので、このまま捕縛したままどこかへ追放することにしましょう。ええ、その方が手っ取り早い」
殺し殺され、その縁を辿って来られても面倒だというのも理由の一つ。
……うん、デスペナにならないだけでも、マシだと思ってもらいたい。
「それでは、さようなら──『 転移 きょうせいそうかん 』」
やったことは至ってシンプル、万戯華境に穴を開けて冒険世界に落とすだけ。
その先で死んでも、直接関わったわけじゃないので俺がやったことにはならない。
滅茶苦茶睨んできていたが、だからと言って俺を殺せるわけじゃない。
……いやまあ、普段の姿だったら何千何万と殺されていましたけどね。