違法侵入者 その20
違法侵入者 その20
少女──ユキツバキは見届ける。
自身の発動した武技によって、男(?)の首が跳ね上がるその瞬間を。
(殺った)
気は緩めず残心、しかしコストの都合上続けられないソレは解除。
途端、少女の姿は可視化される──それを成していた外套も含めて。
「相変わらず凄ぇな、お前の ソレ プログレス 」
「う、うん……でも、隠れることしかできないから……それ、大丈夫?」
デフォルメされた亀たちは、デスロードを今なお捕縛したまま。
おしくらまんじゅうのようにぎゅうぎゅうにされている姿は、少しほっこりした。
「まあ、見た目ほど苦しくはねぇ。それより何言ってんだよ、現にこうしてサクッと殺せたじゃねぇか。闘技大会の優勝者でも、お前の前には形無しってことだろう?」
デスロードにも少女の姿は見えていなかったが、それでもこの流れこそが元より決められていたものであるため、異論は無かった。
どれだけ強いヤツであろうと、首を刎ねられてしまえば即死。
そう、あんな風に無様に頭を地面へ転がすことに──
「…………」
「……どう、したの?」
「なあ、本当に死んだのか、アイツ?」
「ちゃんと刎ねたよ」
「ああ、それは俺も見た。でも、ここはゲームの中だぞ? ──頭が消えてねぇ」
「!?」
理解すると同時に、すぐに距離を取る。
するとそれとほぼ同時、ゆらりと首を刎ねられた体が動き出した。
「やれやれ、してやられてものです」
「……ひっ!?」
「おや、ご自身で成されたことでしょうに。なぜそのような反応を? ……まさか、死者が恨まないとでも?」
「──その辺にしとけよ。どうせ、そういう仕込みでもあんだろう?」
「ははっ、それはその通り。ですが、私の言葉にも耳を傾けてもらいたいものです。殺しのすべてを否定するわけではありませんが、命を摘み取るという行為には、意味があってこそだと思いますので」
体は首の下へ一直線に歩き、頭部を掴むと首の上に乗せる。
そして、そこにポーションを掛けると光が首の辺りを包み、切断部分を治した。
単純な話、首を刎ねてもすぐには死なないのがツクルのビルドである。
闘技大会と違い、強制退場の仕様が無い分その悪辣さが如実に出ていた。
今使っているのはエクリの体なのだが、憑依状態にある以上、 システムの影響 ステータス はツクルのものを同時に使える──死の業績は引き継がれ、絶大な補正を世界は彼に授ける。
「生存特化ビルドだったか? お前、何でもできんのかよ」
「何でもはできませんよ、少なくとも私一人では何も。まあでも、一人ぐらいなら対処もできますよ──“死偲侵中”」
そう言ったツクルは、首の辺りをトントンと手刀で叩くような仕草を取った。
同時に、首に違和感を覚えたユキツバキだが──その視界は反転する。
「テメェ、何をした!?」
「それで語るわけが……まあ、利はこちらにもありますのでいいですけど。私を殺した相手を、呪い殺すことができるんですよ。嬲り殺しなら最後のダメージのですが、即死するような殺し方なら……御覧の通り」
先ほどのツクルのようにはいかない。
この世界の理に従い、ユキツバキの体は粒子と化してこの場から消え去っていく。
「ああ、お待ちください」
「! させねぇぞ!」
「貴方、【死霊士】を齧っている割には情に厚いのですね……まあ、関係ありませんけども──“ソウルハント”」
休人である彼女は、本来死ねばすぐに死に戻りの処理を受けて蘇生できる。
失敗してもすぐにやり直せる、だからこそ彼らは今回強行的な侵入を試みた。
だが、ツクルがどこからともなく取り出した大鎌はそれを否定する。
粒子の流れは大鎌の下へ、彼の掌に丸い球体が現れた。