違法侵入者 その29
違法侵入者 その29
偽装都市 旅館『ワーフウ』
神代の悪魔と『AAA』の面々の観光案内中、ビジネス担当のサブオーナーにいろいろと話をしてみた。
アイスプル世界に存在する偽装都市、ほぼ鎖国状態で犯罪者が隠れ家にするにはもってこいの場所……だからこそ狙われたわけなのだが、主導権は今こちらが握っている。
「──さて、そろそろ回答の方をいただけますか?」
観光自体は続け、サブオーナーや他の面々にも感がさせる時間を設けた。
大切なのは彼ら自身の意思、強制したものではないという事実が重要なのだ。
その間は悪魔と会話をしていたのだが、それなりの収穫があった。
大前提──神代の詳細を語れない、という一点があっても、余りあるほどの。
詳細を話せずとも、YESかNOか……そのどちらでも語れないものかの三択で示してもらえば、大抵の情報の真実性を把握することができたからな。
ともあれ、観光をしたいという悪魔の目的は果たされている。
そのため、悪魔は肉体の主導権を持ち主へ返し──カルマ(仮)が再び主導権を得た。
「うん、よろしくお願いします」
「……後ろで皆さん、何か言いたげな顔をしていますが、本当によろしいのですか?」
「そりゃあ目論見もあるんでしょう? だけど、それが悪いことなわけじゃない。どちらにもメリットがある、それだけのことじゃないか」
そして、今に至る。
場所は和風……じゃなかった、倭島風旅館の御座敷、何となくの理由で密談っぽい雰囲気の中行われている話し合い。
カルマは悪魔が行動している間もこちらの状況を把握していたので、主導権を得た時点で他の面々に賛成を募った。
すでにデスロードとユキツバキ、それに足止めを喰らい檻に閉じ込められていた面々も観光中に解放済み。
侵入してきたメンバー全員で話し合い、その結果──否決に終わったはずだった。
のだが、それでもカルマの独断で話を受け入れようとしている。
「まあ、こちらとしては都合がいいので構いませんが──では、こちらにサインを」
「契約書、なのかな……?」
「ちょ、ちょっと、それは!?」
「分からない方に説明しておきますと、契約書には格の差がございます。そしてこれは、星の間で交わす書面などに用いられます……最大の違反行為を犯した場合、全星での指名手配を覚悟してくださいね」
未だ解放されておらず、マイのような一部の従魔師しか入れない育命世界など。
また幻想大陸を冠する世界も含め、すべての世界への正規の立ち入りができなくなる。
そんな鬼畜レベルの誓約を設けることができる、最上級の契約書だ。
品質が高ければ高いほど、そういう理不尽な条項を設けることができるのである。
「でも、約束を守れば大丈夫ですよね?」
「ええ。すべての契約書に共通し、書かれた規則に従いさえすれば、何事も起きません」
「なら安心です……えっと、ここに名前を書けばいいんですよね? …………名前、どうすればいいんでしょう?」
「あー……とりあえず、書くだけ書いてみていただければ。予備もありますので」
滅茶苦茶希少品なので、俺の発言に目を剥くサブオーナーの姿が映った。
いやまあ、:DIY:が無かったら確保不可能なレベルの品だからな。