違法侵入者 その30
違法侵入者 その30
冒険世界 暗躍街 中立域
破ったら大変なことになる、そんな契約書に『AAA』のオーナーと共に署名した。
具体的には全部の星に立ち入り禁止……なお、オーナーの名前は悪魔に奪われている。
「──で、その後はどうなったんだ?」
「普通に成立したな。ただ、こっそり撮影した映像越しでも、どう足掻いてもオーナーが書いた名前が分からなかった。悪魔との契約だからなのかは分からないが、それで署名できませんってことにはならないみたいだな」
「……そもそも、『AAA』の連中相手にそういう契約とか、マジで凄いからな」
「いや、滅茶苦茶渋ってたぞ。ただ、かなり適当なオーナーだったからどうにかなった。言い方はアレだが、立場と責任感が全然釣り合ってないな……よくあれで、今までやってこれたのか不思議なくらいだ」
そこまで分かっていてなお、騙すというかごり押しで契約させたダメな大人が俺です。
もちろん、契約したからには損などさせるつもりはないのだが……住民優先である。
あの後は普通に彼らの拠点を選ばせ、そこで[ログアウト]させた。
──同時に、都市のあちらこちらを弄り、都市の設定をだいぶ変更してある。
「お前には言ったけど、純粋な人族は俺しか居ないからな……[ログイン]に合わせて、人形たちが配備されるようにしておいたよ」
「…………凄いディストピア」
「ユートピアとは言わないけどさ、そこはせめてノアの箱舟とでも言ってくれよ」
「人が居ないからか? ……そういえばアレも、自分と家族だけは乗せてたんだっけ」
そこは否定しない、そして新たに仮で乗せた連中はかなりの悪党なんだけどな。
なお、拠点から直接別世界へ行き来できるようにしておいた。
これなら目的が無い限りは外に出ないだろうし、出てもある程度行き先を絞れる。
拠点と言ってもこれまで使っていたものがあるだろうし、メインとはならないはず。
「…………俺の分、あるか?」
「ん? まあ、ジンリから逃げきれなくなったときは言ってくれ。最低限、リスポーン地点として更新できる場所は用意しておく」
「扱い! なんで犯罪組織より雑なんだよ」
「ははっ、冗談だ。むしろ、お前なら……都市住まいでも、本土と行き来できるようにしておけるな」
「……都市住まいなのは確定なんだな」
いやまあ、その辺は厳格にしておかんと。
無論、信用できる奴なのは分かっているので、いつ来てもいいようにはしておくが。
「今はまあ、そんなところだ。すぐにあそこが悪用されることは無いだろうし、こちらの要望にも応えてくれるはずだ」
「そういえば、聞いてなかったな。何を要求したんだ?」
「……ちょっと、人身売買を」
いつかはやらなければならないのだ。
せっかく今回犯罪組織とのコネを得たわけだし、頼んでみた──契約書もあるので強引なことはしない……はず、だよ、多分。