職業スキル健闘 中篇
職業スキル健闘 中篇
主軸となるスキルを持たず、それらを支える補助輪となる職業スキルばかり持つ俺。
それでも塵も積もれば山となる、それを実践すべく検証を始めた。
『────』
「……能力値さえあれば、まあとりあえずは倒せるんだよな」
自らが支配する迷宮内部、その恩恵で一時的に能力値が強化されている現在。
対人検証用に用意した人形を倒し、一息吐くことに。
「基本的な下級職は解放済みだし、住民たちのお陰である程度の中級職も使える。足りないのは補助された分を活かすだけの力、それも今だけはあるからな……ただ一つ、問題があるとすれば──」
《一定の威力を発揮するために、必要なスキルが多過ぎる……でしょうか》
「うん、無理!」
たとえば、剣を振るという行動。
もちろんただやるだけなら、今の俺ならできる……が、ダメージはせいぜい、剣をぶつけた分だけ。
システム的なダメージ計算において、虚弱かつスキルを持たない攻撃は無力に等しい。
それを補うために、様々な職業スキルを使うのだが、そちらも基本は補助輪だ。
剣の構えの補助、一番剣を振るために必要そうな【剣士】の職業スキルがこれ。
これが剣術スキルと組み合わさると、適した形で剣が振れるので急所に当てやすい。
そこに剣術スキルがダメージ補正を付けるので、さらにダメージ計算が捗る。
それができない俺はどうすればいいか──微々たる補正を積み重ねるのみ。
「【走者】の速度補正、【魔法士】の魔力操作補正、【筋肉士】の身体強化補正、【賭闘士】と【博徒】で威力のランダム強化などなど……クールタイムがあるモノはその調整もしつつ、同時に体も動かすのは無理がある」
《ある程度、思考操作や条件反射に長けた者であれば、一定数以上のスキルなどを同時に扱えるとのことですが》
「ああうん、皆まで言わずとも分かる……才能無いんだな」
思考操作、まあ字の如く指や音声ではなく念じるだけで何かを行う技術だ。
この場合は能力の起動、言うは易く行うは難し……かなり高難易度である。
何もしていない時ならともかく、それを戦闘中にするとなればもう大変。
Aが起きた時はB、みたいな条件反射を付けることもできず、完全マニュアル操作だ。
先ほど人形を倒したときは、直立不動状態にしていたからできた。
だが準備するために必死に念じ、掛けた時間を思うと……実用は不可能だ。
「音声式なら、いちおうできなくは無い。ただ、俺の場合はあらゆる行動にそれぞれ別々の職業スキルを使わなければいけなくなる。それに何より、その全部をいちいち口に出したら【救星者】のことがもろバレだしな」
理論上不可能ではないが、大量の職業スキルを保有するヤツは本来クソ雑魚だ。
多重就職によるデメリットが発生し、その抜け道は現状『プログレス』の効果のみ。
それ デメリット が無いうえ、チート級の能力がいくつもある【救星者】の存在は秘匿すべきだ。
……いろんな形で露見しているけど、休人たちにはバレてないからセーフで。