梯子の試験 その04
梯子の試験 その04
重力を操る装置を使い、崖を登り梯子を登り始める。
ただし、これまでの挑戦者とは反対側──宙に浮く足場を裏側から登っていく。
「ちょ、それありかよ!?」「見るなー!」「おい誰か、こいつを地面に落としてくれよ!」「再現はできるだろうけど……これが持つわけないよな!?」
俺がゆっくりと登っている間も、表側から続々と挑戦者は駆け抜けている。
中には女性……スカートを履いた者たちも居るのだが、まあ中は見えない。
休人のそういった部分は、誰でも漫画ありがちなモザイクで塞がれるんだよな。
原人の場合は、休人側の年齢による……大人の場合は、条件次第で丸見えだ。
《結界は……大丈夫ですね》
《はい。次元結界も安定しております》
《創作物の定番ですが、上手くいっていて何よりです》
次元結界、文字通り次元の結界。
次元属性や次元魔法というチート級の概念が存在することから、研究を続けてきた──未だ完成に至っていない代物だ。
レムリア世界で起きた謎の転移、監極に入れられる際の強制転移、そして内部で混沌勢力の神が仕掛けた転移の罠……そうした人族ではできない事象から、辿り着いた理論。
零次元なる虚無の概念。
座標の指定ができない場所を指定し、強引に展開しているらしい。
無いのにある、あるのに無い……つまりそこを通過する概念もまた、すべて無かったことにされるというとんでも結界だ。
あまりにズルい、ゆえにこれは他の結界とは同時に使えない。
振動も魔力も日光も、何もかもが俺に通らないからこそ死に戻りもせずに進める。
《まあ、振動と空気がまったく通らない分、普通に死ぬんだけどな。次元、次元ねぇ……こう、二次元とか三次元とか、創作なら四次元なら何となく聞いたことがあるんだが、零次元ってなんぞや》
なお、説明は聞かない……すでに一度尋ねて答えを貰い──何も分からなかった。
先ほど挙げた通り、有無が謎な概念というのが凡人に理解できる限界だからな。
そんなわけで、零次元結界を構築中の俺は動くことしかできない。
それだけはできる、有無を操る結界──これと同時にあるものを使えば可能となる。
《そうなんだよな……これ、単一での運用は防御だけしかできなくなるんだよな》
《──パシフィス世界を基にした否偽領域、これこそが鍵でした》
レムリア世界は幻想大陸の名を冠する遺失世界、そしてもう一つ俺だけが行ける世界。
パシフィス世界、嘘偽りを否定する世界の理を有する場所。
その理を解析し、再現した否偽領域。
いくつかの形でそれを使えるようにした、その一つが『体現』──自身の周囲に、本来の理を無視した法則を構築できる。
《すべてを無かったことにする虚無の中で、俺だけが有り動ける。そう定義することで、動くことができるわけだ》
梯子をどれだけ登っても、何事も無く居られるのはそのお陰。
存在しない座標指定は俺を基軸にしているようなので、動ければ結界もまた動く。
つまり、空気の無い状態で現状を維持したまま歩ければ、ずっとこのままで居られる。
普通なら無理だが……死んでも問題ないので、実質無敵なわけだな。