梯子の試験 その09
梯子の試験 その09
今回の出来事を経て完成したアイテムを、生産ギルドに売りつけた。
天の梯子を模した、宙を歩ける靴──その特許申請をギルド長にしてもらうことに。
「……おっ、もしかしてこれか?」
何日か、生産ギルドに詰めて特許云々の話し合いを繰り返した。
使い方の説明、そして被け……テスターたちでの実地使用などいくつかだな。
その日もギルド長と特許料代わりの条件の話をしたのだが、その帰り──どこからか一匹のハトが飛んできた。
真っ直ぐ俺の下へ飛んでくると、そのまま俺の肩に着地。
パッと発光したと思えば、その姿が手紙へと変わっていた。
「『SEBAS』」
《使い魔、形式は魔術ですね。ただ、気になりますね……どうしてこの手紙は、このような魔術式で編まれているのでしょう》
魔術はシステムの産物である魔法と違い、我流で魔力を運用するための技術の一つ。
北欧神話では主神が独自の魔術を生み、人族に分け与えたとされている。
同様に、ギリシア神話においても魔術が存在する……が、少々差異があった。
独自の魔力文字であるルーン文字を生み出した北欧神話と違い、こちらは魔法の応用。
魔法を再現した魔術、と称するのが一番簡単だろうか。
とある女神が司り、彼女を信仰する者たちから広まった魔術……それが残っている。
まあつまり、『SEBAS』が見る限り天上世界で使われるものでは無かったようだ。
うん、俺には特段詳しいことは分からないのだが、これだけは分かる。
「『SEBAS』だからそういう魔術だって分かるけど、普通なら分からないはずだ。これについては星と関係無いから、レベル999の拡張情報にも載ってなかったし」
《そうですね。北欧神話との繋がりから把握していなければ、分からなかったでしょう》
「魔術も結局魔法が使えない人が編み出しているし、無いわけじゃない。だから、こっちで送ってきてもおかしくはないわけだ……特に、こういうものならなおさら」
《──なるほど、そういうことでしたか》
結論から言おう、俺は無事入界審査である試験を突破していた……ただし、それは円満な形では無かったようで。
読み終えると同時、新たな[称号]を獲得したという通知が入る。
──『希臘天界通行許可証:第肆号』、すぐに調べたその詳細にすべてが載っていた。
「事前情報通りなら、神様や英雄たちが零号扱い。優秀なヤツが壱号、そうじゃないヤツが弐号。試験を突破したヤツで参号、そして突破したがいろいろと問題を起こしそうなヤツが肆号……まさにこれなわけだ」
なお、神族に[称号]のシステムは無いのであくまで仮のもの。
そして、数字の違いで身分の差などは──表向き──無いらしい。
ただまあ、それぞれ扱いが違うのは分けられている時点で当然なわけで……。
そして肆号を持っていると、滅茶苦茶警戒される、そういうものなんだとか。
わざわざ天上世界で使われていない仕様の魔術だったのは、その扱いも込みなわけだ。
簡単に解析できるようなものではない、好待遇がいいならきちんと 上を目指 つく せ、と。
「ともあれ、これで行けるようにはなったわけだな」
《──転移門の座標が追加されました。正式に、ギリシア神話の領域へ向かうことができるようです》
「具体的な場所とか分かるか?」
《前回訪れた領域の端、その付近だと思われます。少なくとも、懇神会の会場となった座標とはかけ離れております》
まあ、犯罪者予備軍に渡すような許可なわけだし、仕方がない。
とりあえず見に行って、すぐに何かできそうにないなら引き返すとしますか。