冥界調査 前篇
冥界調査 前篇
失名神話の創造神様に手紙を送り、ギリシア神話に階級格差があるかを尋ねた。
明確な答えは得られなかったものの、階級の制度そのものに意味があるとのこと。
「ここで流れ的に天界へさっそく行くのが定番な気もするけど、ここはあえて別の選択肢でも取ってみようと思う」
《では、どちらへ?》
「天界は神話が統べる世界、だけど神話云々が関わる世界はそこだけじゃない……というわけで、そっちを当たってみよう」
《──畏まりました。それでは、私は天上世界に配置したドローンから情報を集めておきましょう》
何を言いたいのか、すぐに理解してくれた『SEBAS』。
ならばそちらは任せて、俺は俺で行動しよう……困ったらすぐに呼ぶけどさ。
◆ □ ◆ □ ◆
冒険世界 冥界
「──それで、ここに来たわけね」
「そうそう、『冥王』である貴女ならギリシア神話の冥界についても、何か知っているかもしれないと思って」
「ふーん、ギリシア神話ねぇ……たしかに、資格は持っているみたいね」
天界が天の上に在る世界なら、地の下に在るのが──冥界。
こちらもまた、神話に強い関わりのある世界……ただ一つ、違いがあるとすれば──
「わざわざこっちから来たということは……まさか、ここを抜け道にでもするつもりだったのかしら?」
「バレたら面倒だし、最終手段だよ。来た理由は言った通り、『冥王』様にギリシア神話について情報を授けてもらいたかったんだ」
「……そう。話せる内容に制限はあるけれども、それでもいいなら構わないわよ」
彼女こそ、冥界を統べる女王。
──天上世界と違い、冥界全域において高い権限を有しているのが彼女なのだ。
そして、俺は冥界において移動だけならば彼女以上の権限を保有していた。
だからいちおう、彼女の言っていたようなことも考えてはいるんだよな。
「まずそうね、こっち側におけるギリシア神話の領域について説明しましょう──領域は大きく分けて二つ、エレボスとタルタロス。前者は比較的浅い領域、後者は重罪を犯した者が入れられる牢獄のようなものかしら」
「……星敵って、後者か?」
「間違いなくね。で、ここからが重要なのだけれど……冥界から天界へ、通じる道があるのよ。それが──」
「……エリュシオンか」
「あら、知っていたのね。そう、貴方がよく知る北欧神話の英霊たちと違い、ギリシア神話は一度冥界を通り、死した英雄たちは天界へ招かれることになるわ」
つまりはそういうことだろう。
ここからエリュシオンへ向かえば、自ずと天上世界へ辿り着くことができると。
まあ、それをやれば当然不法侵入だ。
俺は英雄としての実績など無いし、正規の方法で通ることはできない……あくまでも、情報収集のためだけなんだよな。