天界情報精査 前篇
天界情報精査 前篇
アイスプル 迷宮『永智の諸庫』
冥界からの天上世界潜入は諦めた。
さすがに神代のヤバい連中が収容された場所からの生還など、簡単にできるはずが無いからな。
そんなこんなで冥界から出た俺は、一度アイスプルへ戻ってきた。
そして向かったのは、アイスプルの情報を司る迷宮──『永智の諸庫』。
本という形式にこだわらない、データや記憶そのものすらも置かれた情報の集積地。
偽装都市にも無い、『SEBAS』が得た情報のすべてがここにある。
「さて、調べますか」
迷宮内はどこまでも広い。
様々な形で陳列され、精査方法もバラバラな情報を調べるのには手間が掛かる──なのでそれについては一纏めにしておいた。
入り口に設置されたギミック、魔法陣を踏むことで眼前にホログラムが投影される。
あとは好みの形で指示を出し、情報の中から必要なモノを見つけるだけ。
「……明確に天上世界へ繋がるって判明しているのは、やっぱり『天の梯子』だよな。けどギリシア神話関連の情報は無し、梯子から上に行ったっていう人の記録も無い」
梯子の先に何があるのかは分かっているのに、その詳細は明かされていない。
……作為的なものを感じるが、見つけられていないだけかもしれないと割り切ろう。
「──『SEBAS』、上はどうだ?」
《いくつか得られるものはございましたが、やはり隠密を主体としているため決定的なものが得られておりません》
「それはしょうがない。第肆号から下は無いし、慎重にやっていこう」
零号……はともかく、壱号から参号の証は行動次第で昇格や降格が発生する。
だが肆号に降格などない──剥奪、そして追放が成されるのみ。
《そしてもう一つ──外延部の者たちは、第参号の保持者です。また、観測している限り第肆号の者は居りませんでした》
「…………そもそもの話、肆号の者自体が居るのか?」
《旦那様があちらを訪れた一瞬、強制的に起動した『希臘天界通行許可証:第肆号』から反応がございました。監視用のものでしょうが、これを解析すれば他の保持者も見つけることができると思われます》
「分かった、次の課題に入れておこう。あとはそうだな……冥界で得た情報をこっちに反映させておいてくれ。関連ワードが何かヒットしないか、いくつか調べておきたい」
《畏まりました》
タルタロスやらエレボスやら、休人なら分かりそうな単語が出てきた今回のやり取り。
神話が実在し、英雄たちがかつて活躍したならば、語り継がれていてもおかしくない。
吟遊詩人の歌もまた、その差異も含めてここには集積されている。
世界中に配置したドローンが、様々な場所で情報を集めてくれているからな。