天界情報精査 後篇
天界情報精査 後篇
神話が実在する影響よりも、職業システムによる意図した情報の選別の方が、何だかんだ世界の文化に影響を与えている気がしないでもないと気づいた。
回復アイテム一つ取っても、ポーションにするか丸薬にするか、あるいは回復魔法を封じたほぼ水か……なんて分類が、素材の差異などで決まってしまうからな。
そうした違いは各地域で崇められている神様のお告げではなく、職業システムが提示するアイテムによるもの──まあ、それでも大半は薬草を煎じた液体なんだけど。
「って、だいぶ話が逸れた……要は、文明の発展に神話はそこまで関われていない、ということでいいのか?」
《正確には、現代において……と付け足すのが正しいですね》
「おっと、神代を忘れてた」
字の如く神の時代、人と神が共存していた大昔の出来事。
その名残は今なお残されているが、なぜそれが終わったのかを人々は知らない。
これについては俺も同じ。
というか、アイスプルという神代の痕跡は一切合切消失した虚無からスタートした俺こそが、一番気にしなければならないもの。
何度か失名神話の神々へ尋ねてみたが、誰も教えてはくれなかった。
こちらもまた、何らかの制限で教えられない……みたいな感じではあったけども。
「で、それに対して神話の領域がどうなのかという話なわけだが……よく知っている北欧神話、あと懇神会で観たギリシア神話から考えると──こっちも制限はあるよな」
《それは間違いないかと》
そも、機械箱庭のように魔力と技術が結び付けば自ずと発展は進んでいく。
現実では不可能とされている分野も、魔法や職業能力でごり押しすればイケるからな。
だが神代の技術を除き、赴いた神話の領域も創作物のような未来感は無かった。
神々も分かっているのだ、人々の技術の発展が必ずしも利益になるとは限らないと。
「神話の存在のありがたみ、技術がどんどん進んでいけばそれが失われるんだよな……だから極力人の力ではなく、神の御業だと思えるようにしたい。でも、あまりに露骨なことはできない」
《魔物の存在や固有種など、享受するだけの無能では絶滅すらあり得たからでしょう。ある程度の地力、そしてそれを支える技術だけは残さなければならなかった》
神様の目的が信仰集めだとして、人々が発展し過ぎても絶滅してもダメ。
一番都合がいいのは絶滅寸前だが、それでは恒常的な獲得が難しい。
ならばどうするのか、職業システムのレシピは隠せない以上、技術は自然と広がる。
──であれば、どうしても押さえておきたい分野のみを隠し、あとは人に委ねよう。
そんなこんなで今に至るわけだ。
神代の技術の内、不老不死やら星間転移門などが世に広まらなかったのは、神代の奇跡として認識が固定されていたから。
分かっていてもどうにもならない、職業能力の補助があっても不可能だと分かれば人々の発展はそこで止まる──少なくとも、外部から新たな干渉が成されるまでは。
「天界のあの残骸は、そうして統制された技術から外れたもの……なんだよな?」
《そうですね。懇神会の会場となった神殿と比べ、断片的に得られた情報だけでもかなり高度なものだと判明しております》
「……あー、つまりアレか。やりたいことをやり抜いた果てに、意見が合わなくなって離反した的な──バンドか何かかな?」
《おそらく、現状で集められる情報はそれを肯定します》
方向性の違いが生んだ悲劇、それが高度な技術の強制排除。
だが温情があるからこそ、残骸の山はあそこにあった……知ってる神様緩々だしな。