神聖術式 前篇
神聖術式 前篇
残念なことに、遺跡の住民たちが無理な解析を行った結果、『プログレス』が一つ失われたことが判明。
移植型は擬似的に不壊だが、装備型は壊れてしまうのだ。
……なお、移植型を解析するのはほぼ不可能──使用者と同一化するからな。
「ともあれ、その解析方法についていろいろと調べたいな……純科学以外の科学、魔力混じりの科学ってことだよな。銃とかそれっぽいのもあるわけだし」
《はい。科学のみでは到達できない、こちらの世界特有のものです》
「まあ、仮に謎パワーとでも呼称しておくとして……でそれで何をしたんだ?」
《[ログ]によると空間の隔離、そして内部構造の透視、そして分解ですね》
「……それをどうやったら、謎パワーでできるのかがさっぱりなんだが? まあ、高度な科学でできる魔法っぽいことも、ある意味俺には理解できていないんだけど」
ふと思いつき、取り出したのは拳銃。
だが引き金を引いて飛び出すのは、弾丸ではなく光の粒子を束ねた光線だ。
他にも元素と呼ばれる属性エネルギーを観測し、撃ち出せる銃も開発している。
アレもまた、魔力を用いず純粋な自然概念の力を抽出して生み出していた。
ただそれは魔力ではなく、特殊な鉱石を用いて可能とした技術だ。
錬金術で属性を帯びた鉱石を製作、そして精製したりといろいろやっている。
なので最終的には、魔力を用いずとも精霊たちが気づくぐらいには濃密な属性のエネルギーが生み出せるものの、百パーセント純科学と言われると少し微妙かもな。
《──信仰、でしょうか》
「シンコウ? えっと、宗教的な信仰ってことでいいんだよな?」
《はい。神聖術式と呼ばれるものがございまして、それらは神々の力を借り受け行使するとされています》
「へぇ……で、その実態は?」
《いえ、それ自体は本当です。人族では認識できない神の言語、それを部分的に人の身で扱うことができるのが神聖術式なのです》
ふと、『SEBAS』が挙げたのは聖職者たちが使うという神聖術式。
創作物でもよくある、他者を癒し不浄を払うなどができるらしい。
「よく女神の方のプログレスでやっている、“神持祈禱”とは違うんだよな?」
《アレは職業能力を介し、システム的な処理が行われています。神聖術式との違いは、処理による画一化──システムにより仕様がある程度定められている、魔法と同じようなものです》
「あー、誰がどう祈っても、発動さえすれば同じ感じにしかならないと。でも、神聖術式は違うわけだな」
《祈る側の信仰心や祈られる側の神格、また求められる事象に対する双方のイメージなどで、その内容が変化する場合がございます。人の身で把握できない神聖なる術式、それゆえの神聖術式となっております》
話を聞く限り、光属性の術式などとは似て非なるもののようだな。
神々の力を扱う、というのは気になるところだ……なんせ、うちだとできないし。
前に一度尋ねたことがあったのだが、神々個々の加護などはともかく、神話全体としての力はまだまだ少なく、その恩恵を授けることができないとかなんとか。
今は神話領域を確立したことで、少しずつ溜めることができるようになったらしい。
……つまり俺も、今なら神聖術式とやらを扱えるということなのだろうか。