試行錯誤 前篇
試行錯誤 前篇
世界の神になってみたら、無限リスキルされてしまう事態に。
まあ、『SEBAS』が想定済みだったので、一命をとりとめたのだけれど。
「そうなるとアレだな……やっぱ無しで。今は『界樹の神子』の権能で補っているけど、常時それってのも難しいし。何より神・世界樹が無い場所でできないもんな」
『…………ハァ』
「いやほら、一度切りとかそういうのじゃないみたいなんだよな。たぶん、これ自体は俺じゃなくてもできることなんだと思う……そういうことなんだろうな」
司る分野の変更、それは古来より地球に伝わる神話でもよくある話だ。
これまで無かったものが追加される、あるいは失われるというもの。
ではなぜそういった事態になるのか──他ならぬ人が、神話に手を加えるから。
あの神は悪魔であるだの、我らの神話においてはこういう存在だの。
信仰の都合上、本来他の宗教というものは邪魔になる。
なので排除する、というのが神の威光が届かない地球での出来事だ。
「だから、こっちの世界でもそういうのが神様スケールで起きたんだろうな。で、魔導神話みたいな神話ができたり、失名神話の神々のように出張するような神様が現れた」
他の神話との関係性から察するに、勝った負けたが理由では無いのだろうが、それでも名を失った神話である以上、そこには相応のナニカがあったのだろう。
「ちなみに、タダじゃなくてそれなりのデメリットはあるらしいぞ。まず、これまでその分野で稼いだ信仰値はゼロになる」
『重いな』
「場合によっては、無理やりさせられる感じでもあるしな。変更の場合はそれで、追加とかだと効率が落ちるらしい。考えてみると、結構知っている神話の神様って、いろんなものを司ってるんだよな」
まあ、地球に存在する神話の場合、他の宗教よりも神様に箔が有った方がいいというのも理由だったのかもしれない……ただ全能を称するより、無数にあった方が当たるし。
逆に失名神話の神々は、基本的に一柱につき一分野なんだそうで。
特化型な分、それぞれの担当分野においては他の神話を圧倒していたらしい。
「でまあ、そんなわけで今の信仰をまったくされていない今なら問題無いわけだ。仕方ないし、トライ&エラーで負担を抑えつつも万能にできそうなヤツを考えよう」
『こんなことを考える者が神なのか……』
「まあまあ、正直検証は必要だったし、今のうちにやっておきたいんだよ。これまで、そういうのをやったデータなんて無いからな」
本来、神族たちにとって神気を得ることができる信仰は必要不可欠なもの。
訳あって分野を変える際も、ある程度の貯蓄か外部からの補充手段が存在の危機だ。
だが現人神は神気が無くとも、通常通りの活動は可能となっている。
代わりに彼らほど神の力を十全に扱うのは難しいが……俺、そもそも使えないしな。