神聖インストール 前篇
神聖インストール 前篇
アイスプル 迷宮『永智の諸庫』
かくして俺は、【現人神(試行)】という試行を担う神となった。
とはいえ、俺自身が神として何か特別なことができるようになったわけではない。
だが裏技的に、信者が使うための神聖術式自体は用意することができる。
……それを神様当人が使ったって、悪くは無いだろう?
「──そして、1日と数時間が経過した。待ちに待ったこの時が来たわけだ!」
《はい。用意はすでにできております》
前日から、『SEBAS』が俺専用の神聖術式の開発を行ってくれていた。
それも、他所から頂いてきた神聖術式を、更に『プログレス』で改造したようなもの。
「それでそれで、どんな内容なんだ?」
《神聖術式“至行”、魔力を消費することで望んだ結果を引き起こしやすくなります》
「…………ん?」
《要は、99%の可能性を100%にすることができるというものです。元より存在する成功率、それを増やすことができます》
つまり、不可能を可能にする……なんて主人公っぽいものではなく、できることがほんの少しやりやすくなるといったところか。
魔力の消費を増やすことで成功率は更に上げられるようだが、燃費の方が問題。
ただ適当に使っても意味は無く、あくまでも『試行』の果てを求められるらしい。
《前提として、求める結果における最適解を行わなければなりません。ちょうど、科学でたとえるのが良いでしょう。入念な準備と環境、そして正しい手順を踏むことで求める結果に辿り着くのです》
「科学ならそんな感じだけど、バトル関係に当て嵌めると……クリティカル、とかそういう感じになるのか?」
《そうではございません。旦那様、急所を当てなければ倒しづらい魔物をイメージしてください》
「……うーん、メタルな感じか?」
迷宮の機能で確認したことがあるが、いちおうメタルな感じで経験値をたっぷり溜めた魔物というのは存在する……意図して呼び出すには、コストが高過ぎたけれど。
《はい。アレと相対し、“至行”を発動したと仮定しましょう。相手の行動をも予測し、自らにおける最適解で攻撃を行った際、それは効果を発揮し──1ダメージを与えます》
「1か……。クリティカル、つまり一発で倒せるわけじゃないんだよな?」
《あれらはシステムにより起きる、偶発的な現象です。旦那様の“至行”は、そういった実力外の現象を排除することで、正確さを高める術式となっております》
「要するに、HPを実力で削り切ることになるわけだ……最上級のメタル系とか、凄い時間が掛かりそうだな」
他にも様々なことに当て嵌めることができる、それが“至行”の神聖術式。
それが適性を持つ者、あるいは俺の加護を持つ者なら誰でも使うことができる!
「……まあ、今の俺には加護を配る力は無いから、適性があるヤツが俺を認識して祈らないといけないんだが…………これまでは、そういう認識だったから使わなかったわけなんだけれど」
《はい。少し手間は掛かりましたが、調整の方は上手くいきました──『プログレス』への追加、成功しております》
「そもそも、他の神話も女神プログレスの根源である『プログレス』を使わせない、ということにはできなくなっている。ならば、俺がこの流れに乗ってもいいじゃないか……とはいえ、強制的に使わせる気は無いけどさ」
そう、俺がこれを利用し、そのまま独占に移行するのは簡単だ。
だがおそらく、いや間違いなくそれをしたらロクなことにならない。
いろいろと根回しが必要なことだ。
──そんなこんなで、一先ず俺は神・世界樹へ向かうことに。