神様談 前篇(29)
神様談 前篇(29)
人々を高次元より見下ろす、高位の存在たる神々。
そんな彼らのうち、名を失いし神話に属する神々の領域。
かつては何も無い真っ新な空間だった。
……そこはレンタルだったため、あまり自己主張をしないよう制限していたためだ。
「ふっふっふ、ついに引っ越し完了さ! ここが新たな神話領域となるんだ!」
声高々に叫ぶ少年──の姿をした創造神。
ツクルが神・世界樹内に形成した空白の神域に、彼ら失名神話の神々は居を移し、これまでできなかった模様替えを行っていた。
せいぜいがツクルからの献上品を飾る程度だったこれまでと違い、自分たちの神域ということで彩ることができるように。
……ただし、名を失った神話であることには変わりないため、ある程度の制限はある。
それでも、各々が領域を割譲し自分たちの色に染められることに変わりなかった。
「あっ、◆◆◆◆の分もちゃんとあるから。あとでいい感じにデザインしてみなよ」
「…………」
「それに、また臨時収入が増えるかもしれないからね……効果だけで神聖術式を選べる仕様になっているみたいだし、これはまた名持ちの神話が荒れるね、間違いなく」
「……はい、間違いなく」
ツクルにより失名神話に伝えられ、また他の神々へ広まった神聖術式の流布。
それは一人でも使用者を増やし、信仰値を稼ぎたい神話にとって目から鱗の出来事。
本来は聖属性の適性、あるいは加護を受けた者しか扱えなかった神聖術式。
それを『プログレス』があれば誰でも、一つとはいえ使うことができるのだ。
得られる信仰値が微々たるものでも、増える使用者の量は桁違い。
もしも、そのすべてが自身の神聖術式を使えば……そう考える神も多かった。
「とはいえ、一番はやっぱりアズルちゃんの神聖術式だと思うけどね……うん、現人神であれは一種のイレギュラーだよね」
「命運の神聖術式ですね……」
「そもそも、加護を授かれば使えるからそこからもう異常なんだけど。神代と違って、今は神族が地上に降りるのには手続きが居る。それを無視して常駐できるんだから、もう加護も与え放題だよね」
神代──遠き昔、人は神と共存していた。
その当時は神の気紛れも多く、加護を持つ人々も多かったのだが……今の時代においてそのような行いはできない。
一月に加護を配る数も神話ごとに制限されており、最大人数や祝福なども決して多くは振る舞えなかった。
だが現人神は違う。
神族の縛りが存在しない彼らは、自らの神気が持つ限りその力を自由に振るえる……無論、無茶をすれば人による制裁が下るが。
当然、アズルがそのような真似をするわけもなく、人々にとって良い結果が生まれるように振る舞い、自然と信者が増えていく。
その過程で加護を持つ者が増えていくが、彼女の場合は信奉者のよる信仰値の供給が止まることを知らないため、意識せずとも自由にその御業を広めていた。