錬金チャレンジ その30
錬金チャレンジ その30
アイスプル
休人たちの包囲網は、ギーフの活躍により突破することに成功した。
他者に有用なバフを、いくらでも盛ることができるというバッファータイプなのだ。
なお、一番ヤバいのは個人用だったり超短期的なものでも、複数人かつ長時間施したりできるところ……おまけに、バフ・デバフならどんなものでも蒐集できるんだよな。
「さてさて、ここからが重要だ──『トラベルトランク』、起動」
生産世界に赴いた理由。
わざわざ罠に掛かったのは、今後いくらでも潜り込めるようにするためだった。
少し前に、冒険世界の万戯華境でも仕込まれ違法な侵入を許していたその原因。
一度仕込めば何度でも、排除されるまでそこを起点に転移可能になる『プログレス』。
本来の使用者が持つ『トラベルトランク』には、犯罪行為に使いづらいよう制限を設けた……が、俺が管理者権限で使う分には無制限としてある。
通常では見つけられない場所に座標となる旅行鞄を置いておくことで、アイスプル側においた旅行鞄からそちらへ向かえるのだ。
「まあ、しばらくは諜報タイプの人形を向かわせて情報収集することになりそうだが……『SEBAS』、どうなっている?」
《旦那様が帰還後、星敵への警戒は解除され休人たちが喧々諤々となっています。一方的に死に戻りとなり、デスペナルティを受けたわけですので》
「お詫びの品にアイテムをばら撒くこともできなくはないけど……まあ、そこまでする必要は無いからな。生産世界がトランク探しを命じているわけでは無いんだな?」
《はい、まだ気づいていないのでしょう。ですが、そのまま使用すれば露見は必至かと》
アイスプルでも、そうして正規の手段以外で来訪者が現れればさすがに気づく。
だいぶ前、『愚かな賢者』と共に魔導世界へ向かった際は……間接的に行ったからな。
「だからこそ、トランクもあんな場所に用意したんだよな……ふむ、人造人間ならそれこそバレづらいかもな」
今回の件で、生産世界内で人造人間が流行りになることは間違いない。
彼らに任務を与え、単独での活動を許す者も現れるだろう。
そうなったら、俺たちもそれに合わせて派遣してもバレなくなる。
彼らには『プログレス』は持たせられるので、隠密系のモノで潜んでもらおう。
「しかしまあ、ちょっとした挑戦がここまで大事になるとは……なんか[称号]とか祝福とかが悪さをしてないか?」
《無いとは言い切れませんが、おおむねプラスになることですので》
「それもそうか……いや、そうなるのか?」
創作物でよくあるトラブル体質だが、現実の俺はさすがにここまで巻き込まれない。
だからこそ、こちら特有のものを疑ったのだが……うん、対策の仕様が無いんだよな。