ムー襲来対策 中篇
ムー襲来対策 中篇
ムー世界からの襲来について『騎士王』に聞いてみたら、イベント世界に関する情報を貰った。
なお、イベント世界は俗称である。
正式名は『夢創世界[イベンリア]』、その『夢創』という単語からも分かる通り、いろいろと不思議なことが起きやすいのだ。
「とはいえ、配置された逸脱者たちも来てすぐに動けるわけではない。取り決めがある以上、あくまでも防衛だ。そこはやはり、休人たちの助力を必要とするだろう」
「……一方的に、受けるだけになるのか?」
「そう言うな。たしかに貴公が思う通り、思惑が交錯した結果の膠着だ。それでも、人命最優先なことは間違いない。そのうえで、以降の対処について方針が異なるのだ」
「まあ、それは……そうなるか」
各星ごとに意思のようなものがあり、それぞれの決定がぶつかり合うこともある。
だからこそ、全一致で俺を消すという答えも出ず、こうして生かされているわけだし。
人命最優先なのだって、すべての星が等しく大切に思っているから……ではない。
そう思ってくれている星もあるかもしれないが、要はパフォーマンスだ。
切り捨てる時は切り捨てる、だが不必要にそれをする必要は無い。
……むしろ使い捨てて良い休人たちが居るし、彼らに任せておけばいいという感じだ。
「元『超越者』の俺が好き勝手にするのは、別に問題無いんだよな」
「休人であれば、どの星の逸脱者であろうとも関与は自由だ。もっとも、権能持ちがそう簡単に増えても困るのだがな……最近は、それに匹敵する者も現れだしている。どこにも所属しない無軌道な力がな」
「……まあ、それはともかく、好きにしていいことは分かった。星の敵であっても、友好かつ有効な存在であることをアピールしておかないとな」
擬似権能である『プログレス』、その大半は権能に比べ出力が純粋に劣っている。
だが例外として、『マスター』を冠するものだけは匹敵するかそれ以上だった。
開発者である俺たちにも理解できない、管轄外となってしまったマスター級。
休人たちの中にも、その発現者は存在している……本当、どういう理屈なんだろうな。
◆ □ ◆ □ ◆
アイスプル 源初の星洞 螺旋の多岐壺
「──ギーフ」
「お父様! どうしてこちらへ?」
「お前さんをここから出した影響が無いか、その確認と……報告を聞きたくてな」
「異常はございませんわ。見ての通り、いつも通りですの」
そこは、アイスプルの中でも生物に関する禁忌を仕舞い込んだ伏魔殿。
前回生産世界に呼びだしたギーフは、普段ここで仕事をしている。
彼女が居なくなっても、しばらくは持つ仕様なのだが……念のため確認しに来た。
彼女が示す通り──眼下の先では、多くの固有種たちが封印されている。
休人たちが見れば驚くだろう、なんせすべての個体に個別で名前があるのだから。
俺と『SEBAS』で生み出し、増やし続けたコンセプトを設けた固有種たち。
そのすべてが上手くいくわけでは無いが、その成功体はここに集められていた。
そして、ギーフの能力によって強力な封印が施され保管される。
「大丈夫そうだな。やっぱり、固有種相手だとちゃんと通用するアイテムが作れないのが問題だな……すまんな、それができればもう少し自由にしてやれるんだが」
「あら、お父様から直々にわたくしにしかできない仕事が頂けるというのは、光栄なことですのよ? だから謝らないでくださいの」
「悪い……じゃないな、ありがとうな。ただまあそうだな、少し『冒険の間』に送って負担を減らそうか。それなら、もっと自由にできるはずだ」
「! ありがとうございます!」
何なら、ショウのパーティーやルリ騎士団の面々も、迷宮への直通なら入れるようにして戦える機会を設けてもいいかもな。
完全に身内贔屓ではあるが、こういう形での感謝の伝え方もありかもしれない。
……まあ、それはそれとしていろいろと仕込みはさせてもらうの確定だけど。