ムー襲来イベント前篇 その03
ムー襲来イベント前篇 その03
イベント『襲来、ムー世界』が始まり、俺が訪れたのは森人族の隠れ里。
情報収集程度のつもりだったのだが……どうやら、ここに一人迷い込んでいたらしい。
「さて、ここだよ。さっきも話した通り、里のすぐ近くに彼は現れた。言葉が通じなかったから、『門』が繋がっていない世界の者と判断。情報をいろいろ聞かせてもらうため、ここに入ってもらったよ」
「では、まだ何もしていないと」
「もう少ししたら、精霊たちに頼んで言霊を中継してもらうつもりだったけどね……どういう副作用が起きるかは分からなかったから最終手段にするつもりだったんだ。でも、君が居るならそれも必要ないね」
「……言語の方は少し言葉を聞けばわかるようになりますので、まあ何とか」
このイベント、まさか言語を一から聞いていかないとダメなのか?
いや、でも開始前の映像だとちゃんと意味の分かる内容……って、それは仕様だな。
おそらくこの手の定番、言語を翻訳するナニカが向こう側にもあるのだろう。
ただし、それは上位の者だけが持っているとかそういう感じ。
だから迷い込んできた者と話すには、また別の方法が必要になる。
先ほど里長が話した精霊による言霊、そして──それこそ言語系スキルなどだな。
「…………『SEBAS』?」
《映像を基に、最低限の翻訳は可能となっております。接触後、随時アップデートしていきます》
「それでは、中でお話をさせてもらいます。くれぐれも……」
「分かっているよ。何かあったら、すぐに中から音を出すんだよ? 君から貰ったアレもあるからね、多少の無茶はできるよ」
……それ、蘇生薬(非希釈版)ですかね?
さすがにそれを使うのは、いろいろとどうかと……うんまあ、確実に死人は出るか──俺という死者がね!
◆ □ ◆ □ ◆
部屋の中に居たのは、映像に出ていた子供ではない成人男性。
複数人が迷い込んでいるというのが公式の情報なので、それは予想通り。
気になるのはその服装。
軍人やお姫様のものはかなり凝ったものだと分かっていたが、映像に出ていた子供や目の前の男性のソレはとてもシンプルだった。
だがそれ以上に、おそらく用いられているであろう技術がまったくの未知。
言語の解析に並列し、そちらの解析も現在行われているほどだ。
「──■、誰で■か!?」
「あー、すみません。ええっと、言葉は分かりますか?」
「……? ■っと、こ■? あー、言葉、分かる」
「少しずつ調整していきますね……翻訳機能向上のため、質問に答えてください」
「はい、分かる」
そこからは質問を繰り返しつつ、少しずつ翻訳の精度をアップデートしていく時間。
その間に、様々な観点からムー世界の情報解析を行うことも忘れない。
うん、俺自体はただ用意されたテキストを読み上げていくだけ。
なんでそれで上手くいくのか分からんが、そうなるんだから仕方がない!
「──以上です。これで、必要な情報も集まりましたね…………どうでしょうか?」
「驚きました……この世界は、知らない言葉がすぐ分かるようになるんですね」
「私の場合は特別でして……機械、をご存じですか? あるいは魔道具など」
「いえ、どちらも分かりません。それはいったい?」
「どちらも道具の一種です。機械はそれらを物理の力で、魔道具は魔力の力で運用することを前提に作られています」
「……ああ、陽素のようなものですね!」
ここで急に出てきた、謎概念である陽素。
何となく響き的には、魔力のような感じもありそうだが……もう少し聞いてみるか。