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ムー襲来イベント前篇 その13

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ムー襲来イベント前篇 その13

ハッキングに失敗した俺は、再び軍艦の動力を落として壁抜けで動力室に潜り込む。

念のため、『イッスンボウシ』の使用は継続……『インビジブルクローク』も同様に。

「さぁ、お仕事の時間ですよ」

超小型ドローンをフロートディスクでばら撒きつつ、部屋の中を把握。

度重なる動力の遮断、さすがに無視できない異常事態に彼らは原因の調査を急がせた。

「マニュアルは…………おおっ、なんと都合のいい、のか悪いのか……」

原因が分からない以上、どうすればいいか分からない作業員たちはマニュアルを読むことにしたようで……一つの場所に集まり、複数人でマニュアルを調べている。

「とりあえず、一台配置して上から撮影させてもらうとして……他にありませんかね」

《現場には一冊しか無いと思われます。彼らにとっても秘匿すべきもの、厳重に仕舞われていたものをああして肩を並べて見ているのでしょう》

「……こちらであれば、収納系のアイテムも封印の術式などもありますからね。上からの承認でそれを取り出せるようになり、見ることができるわけですか」

ある意味、秘匿技術の塊だからな。

だからこそ分かる、やはりムー世界はかなりの技術に加え高度な社会性を有した世界であると。

そうした取り決めが順守されている、まあ彼らが軍人だからというのも理由だろうが。

職業システムで適した職に就いている、というだけではないわけだ。

「こっそり奪う、というのも現実的ではありませんね……触れた本を複製できる、なんて力があれば話は別でしたが…………あっ、ありましたね」

実は『プログレス』にも存在する……が、そちらは本の価値などで複製の成功率が変わるようなので使わない。

代わりに使用するのは、『魔王の取腕』。

それは『プログレス』ではなく、俺がこれまで接触した権能持ちの力を再現するためのアイテム。

「使用するのは──『学者』の権能」

透明かつ極小のまま本に近づき、権能を帯びた手で本に触れる。

そして、再び距離を取り誰も居ない場所で権能に意識を向け──空を掴む。

何も無かったその場所に、先ほどまで触れていた本と同じ物が現れる。

ただし、大きさも同じだったのでそれを支えきれず──ドローンに回収してもらった。

創作物などであれば、ここで落として落下音から気づかれる流れだっただろう。

しかしさすが『SEBAS』、この流れを読み切りドローンを先んじて配置していた。

「うちの図書館の本も、こうして複製していたのをうっかり忘れていましたね」

《……旦那様、消費の方は?》

「それなりに。ですが、必要経費でしょう。製本技術もかなりのものなようで……解析をお願いします。あと、損耗した分の補填を」

《畏まりました》

再現自体は完璧でも、それ以外の発動に必要なコストまで賄ってくれるわけではない。

今回使用した『学者』の権能、その一つである本の複製もまたそう。

禁書だろうが魔本だろうが、何でも複製できる代わりに存在する対価の要求。

それは特殊なもの、あるいは希少であればあるほど重くなる。

今回の場合、遺失世界の価値ある本ということで計り知れない価値を有していた。

なのでその対価も相応に……図書館の本が何冊か、失われただろうな。