ムー襲来イベント前篇 その14
ムー襲来イベント前篇 その14
軍艦の動力室にて、整備兵たちが非常時の打開のために読んでいたマニュアルをこっそりと複製した。
理から外れた権能、『学者』によってそれは成される。
対価は相応の価値の喪失──俺の所有する本が、図書館から消えたことだろう。
《──確認できました。計三冊、どれも禁書庫に入れていた物でした》
「つまり、それに匹敵する価値があのマニュアルにはあると……とても興味深い」
とはいえ、失われた物は取り戻せばいいだけの話。
持っている本をすべて把握し、何が消えたか分かれば復元も簡単だ。
……ここまでデメリットがデメリット足り得ないのも、どうかと思うけどな。
なお、本来の保持者も同様に、全部記憶しているので問題ないと聞いたことがある。
まあ、だからこそそういう仕様になっているというか……それすらもできないなら、継承できないのかもしれないな。
「ただ、動力を運用するためのマニュアルはここで確保できましたが、他にも同様の物はあるはずですよね。たとえば……この船そのものの使い方、とか」
《……艦橋であれば、あるいは。ですが、おそらくはございません。単純な話、資料を置いておく危険性を重視するでしょうから》
「…………ああ、なるほど」
整備を担当する軍人については、経験したことの無いトラブルへの対処も含め、マニュアルを用意してその都度対応に当たるからこそ、認可が要るとはいえ用意されていた。
だが、お偉い様方に同じことが求められるかと言うと……違うだろう。
なんせ、ムー世界は把握しうる限りかなり高度な技術を有しているわけで。
では、どうするか?
それこそ、万能エネルギー陽素を媒介としたアイテム、陽具が上の者であれば使用を許されているだろう。
万能だからこそ、どういう使われ方をされるか不明だが……資料を紙として残さずとも軍艦を動かせる、そんな代物があると俺は確信していた。
「システム周りですしね…………何より、うちに『SEBAS』が居るわけですし、同じことができる世界があるのは当然ですか。まあ、全部を委ねているわけじゃないとは思いますがね」
《身に余る光栄です》
「AI的な存在もいるのでしょうか……それもいづれ、あちらについて知る機会があれば分かりますか──相当早そうですが」
これから何をするか、すでにマニュアルを複製した以上、隠密行動はもう必要ない。
とはいえ、同じことを繰り返すのも……面白味が無いからな。
「マニュアルの解析を急いでくれ……せっかくだ、ある物を有意義に使おうじゃないか」
《畏まりました》
陽素について分かるわけではない、あくまで動力室の使い方が分かるだけ。
それでも、この船を知るのには充分……急がねば、他の奴らに壊される前に決行だ!