ムー襲来イベント前篇 その18
ムー襲来イベント前篇 その18
追い詰められた軍人たちは、上官の指示で陽具の制限を解除。
ビームサーベル(仮)を煌かせ──俺を上半身と下半身とで分断した。
「ははっ、これでは『超越/生者』になってしまいますね……」
「ひぃ!?」
「おやおや、怯えているようですが……大丈夫ですか? ──“窃盗”」
これまで何度も試していたのは、陽具を対象とした窃盗行為。
体を分けられようと、上半身だけで手で這うように動き接触し──発動、そして成功。
相手の状態が精神的に危ういものだったからこそ、通ったのだろう。
その手の中に握られているのは、装飾が施された勲章。
俺の手の中で抵抗するように、バチバチとエネルギーを放出している。
──が再び『超越生者』の権能で無敵状態になれば、それを無視して観察可能だ。
「ふむ、“鑑定”…………まあ、分からないのは仕方ありませんか。とりあえず、現状からの復帰が重要ですね──“死始再生”と」
「何なんだよ……何なんだよ、お前は!?」
「先ほども申した通り、ただの人族……しがない職人で商人、それだけですよ」
まあ、お前みたいな一般人いるか! みたいなツッコミが入るのは間違いなしだが。
死に戻り判定を出す代わりに、その場で即座に肉体を再構築できる術式を起動。
普通に死に戻るのと違い、術式の効果で妙にエグい光景となるのが特徴。
……今回のように、相手の恐怖心を煽る時とかに有用だな。
「目的も果たしましたし、もう充分です──インストール『グランドマロット』」
そろそろ終わりにしよう、そう決めた俺が呼び出すのは 道化師の杖 グランドマロット 。
使えないはずの魔法を使う、そんなシステムに反した力を持つので俺に最適なんだよ。
「闇ですね──“ 極小闇 ミニマムダーク ”」
『ッ!?』
職業能力から使用する、自らの適性から外れた使えないはずの魔法を使う。
代わりに多めに魔力を取られるが……どうせそれ以上に引っ張り出される前提だ。
それは杖の先から出現した、ほんの小さな球状の闇。
だというのに、彼らがそれを見る目はこれまでの何よりも恐怖を感じていると思った。
それでも続行──適性はともかく、いちおう“極小闇”は俺の使用可能な魔法。
それを使ったことにより連鎖する形で、使うことが認められていない魔法が使える。
「選ぶのは──“ 暗黒星雲 ダークネビュラ ”」
「く、黒が……闇が!」「くるな、くるなぁあああ!」「力が……ぬけ……」「こ、これが……おおいなる──」
阿鼻叫喚の地獄、宇宙の事象名を冠するこの魔法は広範囲に弱体化の雲をばら撒く。
尋常ならざる拘束と脱力、中に取り込んだ対象が多ければ多いほどそれも強まる。
しかし、やはり闇に対する耐性がかなり低い気がするな。
陽素や陽具といい、太陽と相反する闇に弱い……ということなのだろうか。
「その辺もまた、今後の調査対象ですね……さて、張り切っていきましょう」
制圧完了、軍人たちは地べたに這いつくばり気絶している。
死んではいないさ、なんせ──生体認証に必要だからな。