ムー襲来イベント後篇 その03
ムー襲来イベント後篇 その03
イベント世界 海岸
後半戦が始まったイベントは、条件を満たせばムー世界へ行くことができる。
その条件は、休人たちが協力することで緩和できる……ということなので俺も動く。
《すべての使用、確認できました》
「──さて、行くとしますか」
休人たちの平均的な活動時間の関係で、初期は現実でいうと午前と午後で二回ずつ。
その時間に海岸を訪れることで、鍵の少女に渡航権を貰うことができる。
それ以外の時間に来ても、彼女は疲労を理由に船室に籠もり出てこない。
本国もとい本世界からの刺客に備え、厳重な警戒がされているとのこと。
だが、逆に言えば警戒されているだけでシステム的に通れないわけではない。
何人もの休人たちが、様々な理由で潜入を試みている。
俺もまた、そうした挑戦者の一人。
正規の時間に来ても良かったのだが、毎度のことながらいろいろと目を付けられている身……姿を隠しておきたかった。
「『プログレス』、魔術、職業スキル、魔法薬に科学装置……使える物は何でも使うぞ」
《ルート案内を開始します。指示に従い、行動してください》
視界に映しだされた矢印を追いかけ、船の中へ向かう。
アイテムを使うタイミング、また発動中のモノを再起動する時間なども全部表示中だ。
それらに従い動けば、隠密行動を誰にも気取られることなくこなせる。
そして、辿り着く一室──映像で鍵の少女が居た場所……とは異なる部屋。
《ここで大丈夫か?》
《休人たちから映像を見たことは知られており、部屋を変えております。ですが、更新後の場所を捕捉して[掲示板]に挙げる者が居りましたので》
《個人情報がガバガバだ……》
《有名な原人たちには、追っかけ……いえ、ファンが多くおりますので。『騎士王』などにも、居るようですよ?》
まあ、冒険世界の最高戦力だし、見た目も正統派美少女騎士って感じだからな。
そりゃあ人気になるよ、そもそも原人たちにも憧れている人がいっぱいらしいし。
「──ふぅ、『光喰い鳥』起動」
『ピヨヨッ!』
《ジャミングを起動します》
先の軍艦潜入で活躍した、『光喰らいの禍玉』をデチューンしたアイテム。
規模と効果を落とす代わりに、局地的かつ瞬間的な同現象を何度も使える仕様にした。
まあ、代わりに限界量などができたが、俺は量産すれば再使用可能だしな。
そんな『光喰い鳥』を扉に近づければ、鳴き声と共に嘴が開き──陽素を喰らう。
それと同時、軍艦の解析を進めたことで可能となった警報のジャミング装置が起動。
本来、扉を覆う陽素が失われたことで鳴るはずだった警報を抑えることができる。
あとは扉をこれまで同様、『プログレス』の壁抜きで通過する。
そのまま鍵の少女に会うだけ……だったのだが、ここで問題が発生。
「…………」
「おや、不審者だね…………冗談です。貴方様がここに来られることは、この身の機能が教えてくれました。ようこそお越しくださいました──【救星者】様」
ベッドで上半身を起こし、真っ直ぐにこちらを見つめる少女。
……うーん、潜入して本当に良かった気がするよ。