ムー襲来イベント後篇 その13
ムー襲来イベント後篇 その13
光を吸収し過ぎて目立つ傘も隠し、拠点を変えるために動く準備を終えた。
誰にも見つからない状態なので、観光気分でいい場所を見つけようと歩を進める。
「──そのはず、だった……んですがね。どうして、こうなったのやら」
燦然と煌く宮殿。
それは黄金を散りばめるわけでも、財宝が飾られているわけでもない──ただ太陽が、それ以上に眩い光を放っている。
明らかに普通では無い建物。
少なくとも『SEBAS』が設定したマークの位置とはまったく異なる……むしろ、近づいてはいけない場所の一つ。
「──【太陽帝】の住まう宮殿、なぜここに私は居るのでしょう」
答える者は誰も居ない。
だが、答えをくれる者がどこに居るのかは目星がつく……というか、眼前に巨大な扉があれば誰でも察しが付くだろう。
「……引き返すことは?」
《周囲に結界があります。『セバスチャン』で予め繋げておけなければ、旦那様との接続も絶たれていたかもしれません》
「まあ、来る前から仕込んでいましたしね。こういうことも、予想はできましたので」
特級職(仮)と思われる【太陽帝】を、過度に警戒した結果だ。
ムー世界を訪れる前から、“神持祈祷”で『セバスチャン』を借りていた。
その回線から『SEBAS』は俺とのやり取りをしているが、それを解除してしまえば俺はそれができなくなる……危なかった、やはり警戒はどれだけしてもし足りない。
「私はどうやってここに来たのでしょう? 普通に歩いて街を散策していたはずです」
《[ログ]に不鮮明な点を確認、修正……成功しました。どうやら座標の強制的な書き換えにより、一切の残滓を残さず旦那様の位置のみを書き換えたようです》
「つまり、駒を別の場所に移したようなものですか。過程もへったくれもなく、もともとそこに居た、そのような感じに弄ったと……やっていることがラスボスですね、本当に」
なお、【救星者】もできないわけではないがリソースの関係でやったことはない。
相手の抵抗とかいろいろとあるが、俺自身が弱過ぎるので燃費が最悪なのだ。
「逆に言うと、弱いけど分かる人的には凄く目立つ私を拉致する分のはお安く済むわけですね──そういうことでしょう?」
「──そうだ」
扉が触れても居ないのに、独りでに動く。
全開放されたその先は、より燦然とした光の世界が広がっていた。
そんな空間の奥で、玉座に座り俺を見下ろす男が独り。
玉座の肘掛けに片腕を乗せ、頬杖をつき俺の問いに答える。
「相応の覚悟と出費が要ると思えば、まさか赤子よりも脆弱であったとはな……異界の特級職は誰もがそのようなか弱い者なのか?」
「いえいえ、まさかそのようなことは。私の知り得る限り、星の名を冠する方々は、誰も彼もが最強の名を欲しいがままにしておりましたよ」
「ならば、貴殿は?」
「かつて、私が救った世界には誰も生きてはいませんでしたので。自動的に最弱である私が、分不相応ではありますがこの職を担うことになりました」
どうしてこんなことになったのか、それはこの先に居る彼から聞くしかない。
この世界の最高権力者にして、特級職の保持者──【太陽帝】様に。