ムー襲来イベント後篇 その25
ムー襲来イベント後篇 その25
お城の宴に混ざり……城下で行われている屋台に行きたいと愚痴る時間。
権力闘争から子供たちを逃がす安全地帯を確保したり、一人時が過ぎるのを待ったり。
時間は等しく経過していくもの。
始まりがあれば終わりがある……つまり、パーティーはお開きとなった。
「さて、この暇な時間にサクッと製作してみたこれを使ってみよう!」
このイベントの終わり、俺にできることは何か無いのかと考えてみた。
思いついたのは花火、締めとしてはイイ感じなのだが……問題が一つ。
日が沈まないこの世界で、花火という光メインの見世物はあまり映えない。
だからこそ、いい方法はないかと考え……ある発想に至った。
「周りが明る過ぎるわけだし……逆に暗くなる花火にすればいいんだよな」
触媒としたのは『光喰らいの禍玉』。
周囲の明かりを根こそぎ喰らうアイテムを錬金用の道具で磨り潰し、『SEBAS』の指示を受けて火薬を織り交ぜ作っていく。
職業には【花火師】が存在し、生産職に内包されているため解放済み。
……別の機会に使っていたため、派生下級職であるレア職業【煙火師】まで使用可能。
そうして、:DIY:と職業補正の力を受けて完成したのが『闇転花火』。
花火とは、煙火の中でも観賞向けなもののことを言う……ゆえに【煙火師】ならば。
幅広い煙火の範疇に組み込んだ花火は、太陽の世界から光を奪い大輪を咲かせられる。
幾つかパターンを組んで作ったそれらを、模倣神代魔道具『模造工場』で増産した。
「あとは、それらを打ち揚げ用の筒にセットして……準備はいいか?」
《発射時間の設定完了。また、【太陽帝】への連絡も済ませてあります。ただ、連絡が欲しいとのこと。周囲を暗くするという現象が民に影響を及ぼすことを懸念している、という建て前です》
「うーん、まあそれぐらいなら良し。それもあるけど、それができることをアピールしたいってだけだろう。それじゃあ、最後は派手にやってみようか!」
《畏まりました》
そうして『SEBAS』が連絡をすれば、すぐにこの世界全体に【太陽帝】からのメッセージが送られる。
曰く、休人たちがムー世界の民に自分たちの文化をプレゼントすると。
また、その影響で空に変化が起きるがすぐに元に戻ることを自分が保障するとも。
政治とは、つまり 政 まつりごと 。
その言葉の意味には、神を祀るという意味もあった──あちらにも事情があるように、こちらにもまた理由がある。
失名神話の普及のためにも、俺もまた俺の まつりごと ・・・・・ ──祭り事を成そう。
展開された筒に魔力を籠め、職業能力でタイミングを計り──打ち上げる。
「── 撃 っ てぇええええ!」
空に昇った無数の玉は、重力に逆らえなくなった時点で炸裂。
中に仕込まれた火薬が反応し、その周辺から光を奪い去る。
同時に、火薬自体の色が空を覆うことで彩りが空というキャンパスに描かれていく。
大衆の反応は上々、誰も彼もが音と景色に意識を向けさせられる。
そして、花火は続く。
以降は『SEBAS』が組んだプログラム通りに、何発もタイミングよく放たれ人々を楽しませる。
「最後の一発、とくと目に焼き付けろ!」
種類も様々、地球において開発された数多の花火が展開され──最後の一発が飛ぶ。
これまでのどの玉よりも大きく、緻密に計算された火薬。
空で開くその花は、人々に強い印象を刻み込む──あるデザインの形を。
その余韻と共に花火は終了、元に戻った空だが……彼らは忘れることは無いだろう。
「創造神様たちが新しいものを作れって言ってたから、住民たちと決めたこのデザイン。絶対に忘れないでくれよ」
空に浮かんだのは巨大な記号──『○』。
○を挟む形で括弧が記されたソレこそが、失名神話の今のデザインだ。
……考えに考え過ぎた結果、乱雑に出てきたデザインの中で、創造神様たちからこれにしてほしいと結局神託が来たんだよな。
簡単だからこそ誰でも分かる、そんな失名神話のシンボルマーク。
この後、[掲示板]やらギルドなどを通じて、詳細を広めていく予定だ。
〆に魅せたこの光景は、多くの者に強く印象付けられたことだろう。
こうしてイベントは、俺の大々的な布教活動により幕を閉じるのだった。