アンヤク(16)
アンヤク(16)
休人たちを巻き込み、ムー世界の危機は退けられた。
王宮の最奥、玉座の間にて語り合うは二人の最高権力者。
「──閉鎖は完了しているよ。少なくとも、正規の資格でここに来ることはできなくなった……例外はあの方だけだね」
「最後のアレは、神話のシンボルマークだと聞いたが」
「……君にそのすべてを聞く資格は無いよ。失名神話、あの方が名乗ったその言葉だけよく覚えておくといい」
イベント終了後、ムー世界へと渡る転移門はその渡航権を凍結させ、移動を禁じた。
休人たちの中には居座ろうとする者も居たが、強制的に送還されて誰も残っていない。
片や世界を統一する帝王、片や世界の意思そのものである鍵の少女。
彼らが語り合うのは、異世界において帝王と同じ立ち位置にある存在について。
しかし、いかに世界の統一者であっても、それは一世界においてのもの。
──井の中の蛙大海を知らず、ムー世界のトップであっても知れないものがあった。
「……それをお前は知っているのだな?」
「知識としてはね」
「それを知るには?」
「…………」
「それすらも語れぬか」
星は世界で起きたすべてを知っている。
また、他の世界のことであっても、権限が通用する範囲内であれば把握可能だった。
たとえそれが自世界において特級職を保有する存在であっても、情報を開示できるかはまた別の話……それほどまでに、失名神話の存在は特別なもの。
「まあ良い……此度の件、星渡りの民たちの力もあり収束したわけだが。これは、預言にも無かったことだな」
「この世界の存在では無いうえ、彼ら自身理の外側に居るからね。あの予言は、この世界の理で導き出されたもの。そうさ……あの未来を変える要因になるかもしれないよ」
特級職【太陽帝】。
そこに秘められた能力には、【太陽皇】には無い特別なものがあった。
それは占星術にも似た力。
星を、太陽を観測することでムー世界に起き得る未来を覗き見ることができる。
今回の『侵略者』襲来は、外の世界によるものだったため観測できなかった。
だがそうではない、ムー世界で起きることが決まっている事象は知ることができる。
「ムー世界だけじゃない。アトランティス、レムリア、パシフィス、そしてメガラニカ。他にも存在する世界群……どの世界も、いづれ来る厄災に備えなければならない。さて、君たちはどのような選択を取るのかな?」
「傍観者気取りか……」
「私たち自身が手を出すことはできないからね。いつだって抗うのは人で、君たちは手と手を取り合うことができる存在だ。私を、私たちの世界を守るためにも……どうか、正しい選択を取ってほしいものだ」
未来を知る人族は、ムー世界において【太陽帝】ただ独り。
だが今、理の外側にある存在が多く現れ、未来は大きく揺れ動きつつある。
これまで視えてきた結末は消えない。
だがその過程は変わり、少しずつ抗う様子が視えるようになってきていた。
「鍵はやはり星渡りの民たち、そして──」
「【救星者】、その名は本物だよ」
「……止めぬのだな」
「それをする権利は私には無い。そして、君の選択にどう応えるかもあの方次第さ」
イベントは終わった、しかしそれは新たなるイベントの始まりを告げる。
──休人たちはこれからも、様々な事態に巻き込まれていくだろう。