巧天の試練 その06
巧天の試練 その06
再び『マギタリアファブリク』を稼働し、生み出したのは一振りの剣。
本物を見て、偽物と相対し、憧憬を抱き、その果てに──
「『規格外ロジカルW:Typeソード[冒剣]』、完成だ」
それはショートソードのような見た目の、飾り気のない無骨な剣。
だがその造形以外は違う、柄から剣先まで全体に回路のようなものが施されている。
この回路を通じ、本物──冒険星剣[アドヴェンス]の能力を再現する仕様だ。
そして、その回路に流すエネルギーこそが『規格外エテーテルドライバー』である。
《おめでとうございます、旦那様》
「これをきちんと使えるかは、今から試さないといけないんだが……『お試し案山子』を設置っと」
設備を用意する以外にも、試し打ちや試し斬りをするためにオブジェクト配置も可能。
ということで、出力を測定してくれる魔道具を設置して試してみることに。
「あーでも、ドライバーと剣を直接繋げられないんだよな……その辺の制限は厳しめにしてあるし、経由するための……全身鎧的なものでも創らないとダメか?」
《旦那様、一振り試すだけであれば、おそらく[アライバー]の試作機でも可能です》
「……あー、外装だけノリで造ったのがそういえばあったな。でも、それで大丈夫か?」
体の周りに機体のパーツを付ける、操縦席に乗り込むような形ではない[アライバー]の試作機。
様々なロボットアニメを見て、そういった機体を何体も製造していた。
今回はその中でも、戦隊や仮面のヒーローにありそうなモノを選択する。
彼らの武器取り出しとかそういう謎技術を解決するため、スーツの中には次元歪曲とかそういうノリで空間を広げられる技術が費やされているので、後からの追加も可能だ。
《今回に限り、中身を交換して回路を繋げれば使用は可能です……ただし、負荷に耐えられず損壊は確定かと》
「まあ、必要経費か。そもそも使ってないから仕舞っていたものだし。『SEBAS』、用意してくれ」
《承知しました》
そんなわけで、ちょっとゴツゴツしたデザインのスーツが搬入されてきた。
内部を弄り、エテーテルドライバーを組み込み──準備完了だ。
「それじゃあ、[冒剣]との接続。及び、エテーテルドライバーを稼働させ、エネルギーの供給を実行してくれ」
《仰せのままに──エテーテルドライバー、起動開始。『巧天』を発動、ドライバーを臨界駆動──出力120%突破》
「おおっ、なんかカッコいい! ……けど凄くヤバそう!?」
《規格外ロジカルW、接続完了。エネルギー供給開始──充填完了、起動します》
スーツを経由し、[冒剣]へエネルギーが注がれていく。
ただ、その莫大なエネルギーは歪曲させた次元の中でも影響を及ぼしているようで。
スーツの耐久度がゴリゴリ減っているし、何なら熱量に変換され俺を温めている。
……いや、正しくは熱している──というか熱死ているのか。
「さっさと使わんと死ぬな」
《旦那様、イケます》
「よし──星剣抜剣」
振るった[冒剣]に装備スキルは無い。
そもそも、人族が装備して使うことができない仕様なので、そういったものが存在していない……という方が正しいか。
それでも回路は存在し、エネルギーが供給されることで刻まれた事象を発現可能だ。
その機構の名は『最強』、十全に力が注がれた一瞬だけ、それは万物を断つ刃となる。
用意された案山子は、運営側が用意した特別な代物。
具体的に言うなら──破壊不能オブジェクトに指定された計測器。
「……エラーか、まあそうなるよな」
だというのに、剣が薙いだ先に案山子は存在していない。
素人が振るったたどたどしい軌跡が、綺麗に案山子を断ち切っていたからだ。