新機プロジェクト その28
新機プロジェクト その28
──それはまるで、月を舞う兎のように。
「おい、先生の解析を急げ!」「機体性能だけじゃない、あの剣も! ギミック付きとか絶対見逃せねぇぞ!」「視えな……って、設計図が送られてきた……なんだよこれ!?」
情報が錯綜する。
機械の残骸で出来た継ぎ接ぎだらけの大陸には、原人である機人族たちとクラン『メカメカ団』に所属する休人しかいない。
先ほどまで居た、非所属の相談役である先生は今──宙を舞っている。
見たことのない装甲を、機体を纏い敵を屠るその姿に俺たちの目は釘付けだ。
「量産機もいいけど、やっぱワンオフも最高じゃん!」「規格外……あの人たしか、そう言ってたぞ!」「それ、『巧天』云々で話題になってたような……」「なんで紐であんなに切れるんだよ、それもギミックなの!?」
送られてきた設計図は、すぐにクラン内の情報網で共有。
そして理解する──あまりにも、それこそ規格外な存在であると。
分かっていても分からない、図面が有っても理解できない意味不明な構成の数々。
真似ることはできるだろう、しかしそれは鉄の棺桶にしかならない。
だが設計図が本物ならば、それは間違いなく実現可能な存在。
莫大なエネルギーと高度な技術、そして自分たちの知らない知識を基に造られた逸品。
「……いつか、アレが造れるのか?」
誰かが零したその呟き。
それは敗北感によるもの──ではない。
紅潮し、上を見上げるその姿は、憧憬を宿した子供のように映る。
「できるできないじゃなくて、やるんだ!」「おおっ、なんかそれっぽい……具体的な方法は?」「……先生に土下座するか?」「なら任せろ、社会の荒波に呑まれた俺の生き様見せてやる!」「…………仕事変えれば?」
認めよう、今の俺たちではアレを造ることはできない。
だがこの場に居る者たちが力を合わせることで、必ずや到達することができる。
「先生が喜んで協力してくれるような、魅力的な提案……」「『プログレス』とか?」「なんか違う気がする。アレが見せ札なら、隠し札で凄いの持ってそうじゃん」「なら、俺たちももっと凄いのを造ればよくね?」
そして、先生の力もあればアレ以上のモノだってできるかもしれない。
──これは確信だ、いや革新だ……世界が俺たちに注目する!
◆ □ ◆ □ ◆
俺がやっていたのは、あくまでも掃除。
俺の居ない場所、かつ逸脱した連中がいない場所から今なお異形たちは大陸内に侵入し続けている。
それでも、数が減った敵に『メカメカ団』は抗い続けた。
何やらそれまで以上の闘志を燃やし、鬼気迫る勢いで。
一定数の排除、そして一定時間の経過。
条件が満たされ──黒い渦は、少しずつ小さくなっていった。