花園の新理
花園の新理
多種多様な『プログレス』。
それは現実、EHO内の世界だけでなく、現実に創作として生まれた世界に基づいた法則を、捻じ込むようなモノまで存在した。
制限できる範疇(マスター到達まで)は世界に悪影響を及ぼさない部分まで抑えておくつもりだが、バグとかチートとかまで持ち込む連中がいないわけじゃないからな。
それとは方向性が違うモノの、自己領域のカスタマイズという『プログレス』もある。
……これもこれで、範囲を限定しているからこそ性能がぶっ壊れみたいなんだよな。
「インストール──『ガーディニアン』」
昔、『リトルマイガーデン』というオンラインゲームが存在した。
設定としては、広大な世界を自由にカスタマイズするというもの。
それ以上の設定は無く、何をするのかはプレイヤー次第。
他のプレイヤーと交流するも良し、自分だけの世界を突き詰めるもよしという感じだ。
しかしそのゲームも、EHOが登場する前にサービスが終了している。
おそらく、というかほぼ間違いない原因が存在しており──著作権問題だった。
「……やっぱり、似た感じで再現できるみたいだ。ヤバいぞ、これ」
生成AIが使われたそのゲームでは、現実の写真を取り込むことで、デザインを弄ったそれらをオブジェクトとして配置できる。
画期的、というかサンドボックス型のゲームを超えようとして、少し無茶をしたんだろうな……話題になったのはそれらがニュースとして報道された時、それが一番だった。
……これ以上は語ることも無いが、要するにだ──その再現を『プログレス』を用いて行うのであれば、必ずその取り込みという工程を踏んでいるわけだ。
「“コピーオブジェクト”と“ポップモンスター”、まだマシな方なのか? AIがどこかのスパコンまで使ってやったっていう、あの『オープンワールド』は無いみたいだし」
《『オープンワールド』……国家秘密を暴き出したという、あの》
「著作権云々はいろいろ見逃されてたけど、その事件がトドメだったんだよな。AIが写真に写った施設を再現するために、中の情報まで徹底的にコピーした結果だ……こっちの世界に来るとは思ってもいなかったけど」
初期からそのシステムは搭載されていたわけではなく、それが導入されたのは数年後。
どうやらAIが自己進化と最適化を繰り返し、独自に導入していたらしい。
なお、インディーズのゲームだったのだが製作者はその後行方不明となっている。
最後に残されたメッセージが『うちの子凄すぎん?』なので、生きているとは思うが。
結果、その国家秘密が世に出回って一時期大盛り上がり……ジンリ曰く、世界恐慌レベルの相場の変動があったらしい、表向きはそこまでじゃなかったんだけどな。
「で、これの製作者自身だったりしたらいろいろ不味いと思って調べてもらったわけなんだが、どうだった?」
《いえ、単純に事件が発覚する前まで、プレイしていたプレイヤーでした。ただし、かなり高度な世界を構築していたようですよ》
「ん? プレイ動画か…………花畑。って、おいおいこれどこまで…………可能なのか、こんなことって」
《EHOと同じく、プレイヤー名『サンシシチ』。『フラワーワールド計画』という実況動画を投稿していましたが、以降は投稿も無くアカウントも未更新。ですが最近、EHOでの動画配信を行っております》
EHOにおいて、動画配信は可能だ。
ただし時間差があるので生配信はできず、休人たちもプライバシー保護をきちんと設定している者は写せなかったりする。
何より、配信のためには専用のアイテムを装飾具の枠に装備しなければならない。
他にもいろいろ仕様はあるようだが、俺は配信者じゃないのはその辺は不明だ。
「つまりそのサンシシチってヤツは、『ガーディニアン』を使って同じのようなことがしたいってことか?」
《すでに。活動場所は魔導世界、少しずつ個人領域を広げ、花を咲かせているようです》
「……地球の地形そのままに、全地形に適した花を咲かせる。言うだけなら簡単だが、実際どうやってやったんだか」
もともと『リトルマイガーデン』は、忠実過ぎる設定にも注目されていた。
適した環境が無ければ動植物は死ぬし、設置したオブジェクトも時間経過で荒廃する。
そのすべてを徹底的に管理しなければならないゲームで、世界という広大な規模で花畑の管理をやっていたサンシシチ……そして、それを失い、手に入れた『プログレス』。
──星一つを花畑にした者が、再び同じ環境を与えられたならば……犯罪者として指名手配されている現状こそが、それを何よりも物語っているのだろう。