死天の試練二回目 その15
死天の試練二回目 その15
……張り切って挑んだものの、やはり俺独りでは全然歯が立たない。
上空では、セバヌスこと『SEBAS』とアルス・ナギマが会話で盛り上がっている。
「なら、次は──」
《旦那様》
「……もう、良いのか?」
《はい。それに……間もなくお時間です》
そういえば、すっかり忘れていたがこの試練は制限時間付きだった。
そのことを『SEBAS』に告げられ、ようやく思い出した……単調過ぎて、な。
「──“己が身を顧みず、迸る紫電”」
ならばと最後の一回、そう決めて挑む挑戦は自爆を前提とした突貫。
近づいてくる敵性ユニットに対し、生体電気を活性化させ高圧電流を解き放つ。
「ふっ、数体は確実に倒せたな」
「三体であったと宣告」
「……アルス・ナギマ氏」
電気の制御など俺にできるわけも無く、死亡判定となり初期地点へ戻される。
これで終わりといったところで、上空から二人が降りてきた。
「氏は不要。セバヌスの主よ、とても良い時間であったと感謝」
「……『超越生者』でも【救星者】でもなくて、セバヌスの主なんだな」
「? ……関心。不満か?」
「いや、そっちの方が嬉しい。別に凄い肩書きなんて無くたって、俺を支えてくれる大切な存在ってことに変わりは無いからな」
まあ、最低限電子機器を初期から確保していなかったら、『SEBAS』も誕生していたのか微妙な気はするが……今は置いておくとしよう。
重要なのは、何やら考えているアルス・ナギマ氏……アルス・ナギマのこと。
それから少しして、彼(?)はある提案をしてきた。
「『愚かな賢者』から術式を貰い受けたと聞いた、その方法は?」
「この『愚者の石』だな。術式を三つ、上書きしない限り永続的に保管することができる仕様だ……鋭意改良中だ」
「……空きは?」
「空の物もあるぞ」
指定されたと思い、登録済みのヤツを出したが違ったようで。
保持数に制限は無いので溜め込んでいた、空っぽの『愚者の石』を差し出す。
「セバヌスの主に術式を。アルス・ナギマを構成する、要素の一部を簡易化した」
「……えっと、それって大丈夫か?」
「条件。そのうちの一つは、術式の共有を目的としている。それが対価」
まあつまり、魔導世界で行った術式開発みたいなことが俺たちだけでできるのだ。
代わりにその術式はアルス・ナギマにも伝わり、解析されることになる。
「セバヌス、どうだ?」
「問題ないかと」
「分かった。ありがたく受け取ろう……損はさせないぞ、頼れるセバヌスも居るからな」
術式を全部開示する必要は無く、また不利益なども発生しない。
俺……ではなく、『SEBAS』との友誼の証と考えておくのが妥当か。
その後、三つの術式の詳細を伝えるとアルス・ナギマはアバターを消失させる。
俺たちもまた、試練の一時中断を選択してここから立ち去るのだった。