魔封獣晶 前篇
魔封獣晶 前篇
アイスプル 偽装都市
術式の組み込みは順調。
ただ、元を辿ればINT値が低過ぎる俺のせいでこうなっていることに申し訳なく思った……仮想脳みそだもんな、INTって。
なお、INT値が低くともスキルの行使や強大な魔法の展開はできなくもない。
ただしその場合、自身の脳みそを用いた処理が求められる。
優秀な才覚持ちならば、問題無いだろう。
だがそうではない者、あるいはそうであってもその才覚以上のことをやろうとすれば、相応の負荷が襲うことになるはずだ。
「──ふむ、物足りませんか」
「闘技場でのメンバー同士の模擬戦、休人のみをターゲットとしたPKである程度欲求は満たしているのですが……大型レイドがしたいという意見が殺到していまして」
「まあ、少し前にムー世界でのレイドがありましたからね。闘技大会で行われた特殊サバイバルのように、悪役が楽しめるものを見つけるのは難しいでしょう」
非合法クラン『AAA』、休人たちによる犯罪クランを統べる大犯罪組織。
そんなクランを管理する、サブオーナーである女性──マリィネとの会話。
なお、お飾りのオーナーにして悪魔との契約者であるカルマ(仮)はここには居ない。
クランの方針については彼女に一任されているので、居なくても構わないのだろう。
そんな彼女が語るのは、主に『DDD』や一部の『AAA』メンバーの不平不満。
PKを含む対人戦闘だけでは、彼らを満たすことはできないらしい。
「……そうですね、策は二つです」
「聞かせていただいても?」
「一つはクローン魔獣、これを闘技場に解き放って蹂躙します」
「…………えっと、本気ですか?」
「まあ、半分くらいは冗談ですよ。イベント時よりも改良を重ね、狂化……じゃない、強化に成功しているんですけどね」
イベントを経て得た職業や称号の効果があるので、自然と質を高められるんだよな。
培養液の質やクローン技術を高め、個体の限界スペックを向上させることに成功した。
とはいえ、固有種との実験に使うぐらいしか使いどころが無かったんだよな。
なので出してみるのもありでは? と考えたが……うーん、無理そうだな。
「では、仮想戦闘でしょうか」
「仮想戦闘……言葉の意味は分かりますが。それはどういったものなのでしょうか?」
「魂、とは違うのですが、いわゆる残留思念ですかね? 魔獣はそれが強いらしく、何かに使えないかと試した結果生まれたものなんですよ……簡単に言えば、ちょっと弱めの魔獣にノーリスクで挑めます」
「それは……」
クローン魔獣との違いは、在庫……というか誰でも何度でも挑める点。
魔獣素材に宿る残留思念を擬似魂魄に蓄積し、それを隔離空間に封印した。
挑戦者はその中に入って戦える。
本来の魂魄が不完全な分少し弱いし、結界に仕込んだ術式の効果でデスペナも発生しないようにできた。
「素材が落ちないように思いますが、その分メリットが?」
「素材だけでなく経験値も手に入りません。ですが、[称号]や討伐実績は手に入るんですよね。こちらも劣化していて十全ではありませんが、挑む価値はあるのでは?」
「……たしかに、求める人は多いですね」
魔獣は討伐者には、大抵が『魔獣殺し:○○(固有名)』の[称号]が与えられる。
おまけにこれは統合効果付きで、『魔獣殺し』一つでそのすべてをセット可能だ。
それだけでも便利だが、一部の最上位職の中には魔獣相当の存在を討伐することが条件となっているものもある。
まだ試していないが、おそらくだが強大な魔獣ならば劣化していてもこれを満たすことができるだろう……こちらの案であれば、受け入れてもらえるだろう。