神様談 前篇(31)
神様談 前篇(31)
その空間は現実味を感じさせない、真っ白な空間……だった。
しかしそれは昔の話──失名神話の神域、そこは色鮮やかな空間となっている。
「最近のツクル君は試練に大忙しだね。その辺、どう思っているのかな?」
「…………なぜ儂に聞く」
「いやほら、『超越者』の『生者』って元を辿れば君の仕事だったじゃないか。あの時点で何度も死に続けたツクル君だからこそ、今があると言っても過言じゃない……つまり、あの試練が面白……大変なのは君の影響だ」
「隠せていないだろう。それに、元を辿るというのであれば、御業を捻じ込んだ■■■が諸悪の根源ではないか」
そこは失名神話において、死神を冠する神の神域。
ある一角には無数の蝋燭が、またある場所には一振りの刀が収められていた。
その空間の主である死神は、突如来訪した主神■■■の問いかけに応じる。
──当神に気づかれないよう、ここに来ているという旨を周りに伝えながら。
「まあまあ、それがあったからこそ乗り越えられたものもあるじゃないか…………ほらほら、それより質問に答えてよ」
「……ふぅ。『超越者:生者』、アレは貴様の御業に容量を取られ、器の崩壊しつつあったツクルを保護することがメインの権能だ」
「ツクル君に説明した、どこでもアバターを再構成できるってのは?」
「説明し、ツクルが理解した権能『も』あるだけだ。アバターの仕様に細工をしただけだからこそ、少量のリソースだけで実現できた権能だ……貴様により、それが可能なスペックだったからこそ、というのもあるがな」
幾つかの効果を内包する『超越者:生者』だったが、その中でメインの権能である死に戻り地点の書き換え──それはもっともコストの掛からないものだった。
「アバターの再構築自体は、あちら側で行うからな。権能はその場所を変更する、それだけで済んだ」
「じゃあ、あの[称号]に関する効果は? アレも斬新だよね、『逸脱者』系自体が基本的に[称号]なんだから、その効果を強化してもあんまり意味が無かったわけだし」
「それもツクルたち休人であれば、自在に切り替えられる点を活かしたな。枠を増やすこと自体にはリソースを使ったが……それも必要経費と割り切れるものだ」
「該当する[称号]なら無制限ってアイデアはなかなか面白かったよ。アレだって、人によっては意味の無いものだし」
生と死、それらを冠する[称号]はそのほとんどが生存に関わるもの。
普段使いできるものは少なく、それゆえに組み込むことも容易だったと死神は思う。
「……が、一つ気になったことがある」
「それは?」
「──休人、星渡りの民を前提としたとしか思えない[称号]。元より、何千何万もの死が獲得条件となる[称号]があることだ」
それこそ、死の続きがあることを当然とした[称号]の存在。
死を冠する神として、死神にはそれが妙に引っ掛かっていた。