熱意の特訓 中篇
熱意の特訓 中篇
──[インベントリ]操作術。
それは本来、休人のみに許されたノーコストの亜空間アイテム取り出し術。
しかし『プログレス』の登場により、誰でも可能となった……それゆえの弊害。
対魔物戦ならばともかく、対人戦となると装備の相性などは死活問題。
相手によってそれらを瞬時に切り替える、その最適解として挙がったのが操作術だ。
理論上、『プログレス』さえ付けていれば純物理職であろうと可能な取り出し。
従来の装備切り替え(『 魔法鞄 マジックバック 』などからスキルで)とは違う、技量こそがすべて。
『どうした、もっと速く! これでは貴様は死んでいるぞ!』
「いや、もう、死んでる……!」
やっていることはある意味とても簡単。
展開した[メニュー]画面から、取り出したいアイテムを選びタップするだけ。
人によって、手動か思念操作かなどの違いはあれど、必要なものを見つけ出すという過程をどこまで短くするのか、その点が重要になってくる。
──そして今、俺は風兎にしごかれながらその短縮を特訓していた。
やり方は至ってシンプル──飛んでくる的に、適切なアイテムをぶつけるだけ。
『ええい、速過ぎて見えないだの追い付かないだの言いおって。真面目にやる気はあるのか、貴様!?』
「…………ハァ。指が追い付かないし頭が回らないし、見ても分からないしでもう大変だな。他の人たちって、いったいどうやって見極めてるんだよ。風兎は?」
『私の場合、暗記だ。取り出す物はすべて決め、常に同じ場所に置いてある。状況に応じて取り出しても、空きは空きとして埋まらずに残してある。戻せば元通りなのだから、その最低数のみを瞬時に出すことができる』
「なるほど、身の丈にあった分だけにする。けど俺の場合……」
『貴様はアイテムを駆使する、いやしなければ戦えんだろう。自然、必要な量も相応に増える。私と同じ方法では無理だろう』
集中し、時間を掛ければ俺でもアイテムを取り出すことはできる。
だがそれは平時に置いての話、戦闘中という思考が定まらない状況下ではない。
そうなると、凡人スペックな俺では凄腕のゲーマーがやるような高等技術は不可能。
能力値によるごり押しもできず、もたつきながら時間を掛けて取り出すしか無くなる。
『だからこその量だ。数をこなし、それを自然とできるように徹底する。生物が意識せずとも動きが取れるように、それを当然といった振る舞いでこなせるようになれ!』
「……難易度高くない?」
『安心しろ、貴様でもできるよう単純な物を考えた。それができれば次、そして次といった要領でステップアップさせていく。最終的には先の理想も可能となるだろう』
そんなこんなで、風に乗って飛んでくる的にアイテムを投げている現在。
色ごとに異なる種類のアイテムを出す、ただそれだけ……段階を踏み、少しずつだ。